オウンドメディアのKPIに、すべての企業で共通する正解はありません。PV・記事数・検索順位といった数値は、そのままKPIになるのではなく、事業目的から逆算して選ぶ「KPI候補」だからです。
さらに、適切なKPIは目的だけでは決まりません。同じ「問い合わせを増やしたい」でも、記事を安定して公開できていないメディアと、流入はあるのに問い合わせが伸びないメディアとでは、優先して見る数値が変わります。
そこで本記事では、KPI候補の整理から、目的と現在の運用状態による選び方、KGIを数式に分解するKPIツリーの作り方、GA4・Search Consoleでの計測、未達時の改善判断までを順に説明します。私自身が編集とSEOの実務で使っている判断の順序に沿ってまとめました。
オウンドメディアのKPIとは
オウンドメディアのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とは、KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)に到達するために、重点的に管理すると決めた中間指標です。KGIは、最終的に達成したい成果を指します。ここで押さえておきたいのは、指標名だけでKGIとKPIが決まるわけではない、という点です。同じ「問い合わせ数」でも、それ自体を最終目標に置けばKGIになり、受注を最終目標に置けばKPI候補になります。
KPIとKGIの違い
本記事ではこの整理で統一します。役割が異なるだけで、指標名によって固定的に振り分けられるものではありません。たとえば次のように変わります。
- 「月間の問い合わせ数30件」が最終目標のとき → 問い合わせ数はKGI
- 「月間の受注件数10件」が最終目標のとき → 問い合わせ数はKPI候補
| 項目 | KGI | KPI |
|---|---|---|
| 役割 | 最終的な目標 | KGI達成までの進捗管理 |
| 例 | 売上高、受注件数、採用人数 | 有効リード数、商談数、サービスページ遷移率など |
| 確認すること | 最終成果を達成したか | 目標達成へ順調に進んでいるか |
KGIを決めるときは、「売上」ではなく「売上高」、「採用」ではなく「採用人数」のように、数値で表せる形に言い換えておくと、後のKPI設計がぶれにくくなります。
KPIはKGIから逆算して設定する
PV・セッション数・検索順位・記事数は、最初からKPIなのではありません。KGIとの関係を整理したうえで、そこへ至る過程のうち重点管理すると決めたものがKPIになります。
言い換えると、計測できる数値がそのままKPIになるわけではないということです。GA4やSearch Consoleを開けば数十の指標が並んでいますが、それらは「取得できる数値」であって「重点管理すべき数値」とは別物です。
まずは事業成果からの大まかな流れを押さえておきます。
売上・受注
↓
商談・有効リード
↓
資料請求・問い合わせ
↓
検索流入・サイト内行動
掛け算の形に分解して目標値を逆算する手順は、後述の「KGIからKPIを設定する方法」で扱います。
オウンドメディアで使われるKPI候補・関連指標一覧
以下は、すべてをKPIとして設定するための一覧ではありません。本記事では、オウンドメディアで確認する数値を実務上「成果指標・先行指標・診断指標・活動指標」の4種類に整理します。どの指標をKPIとするかは、KGIや現在の課題によって変わります。
なお、この4分類は公的に定められた標準用語ではなく、指標の役割を理解しやすくするために本記事で用いる実務上の整理です。
成果指標
事業成果そのもの、またはそれに近いところを確認する指標です。
- 問い合わせ数
- 資料請求数
- 有効リード数
- 商談数
- 受注数
- 購入数
- 応募数
多くの場合、KGIまたはKGIの一つ手前に位置します。
先行指標
成果指標が動く前に変化する、成果の前段にあたる指標です。
- セッション数・自然検索セッション数
- PV(ページビュー)
- アクティブユーザー数
- CTA(行動喚起)クリック率
- サービスページ遷移率
- フォーム開始率
- メールマガジン登録や動画視聴など、成果の手前で発生するイベント
PV・セッション数・アクティブユーザー数は、この一覧から外す必要はありません。位置づけが変わるだけです。認知や集客の拡大を重点管理する場合には、これらはKPI候補になります。一方、問い合わせや売上をKGIとする場合には、成果が伸びない原因を把握するための診断指標として使うこともあります。
読者に向けた一般的な説明では「PV(ページビュー)」で問題ありませんが、GA4の画面や公式仕様を説明する場面では「表示回数(ページビュー相当)」と書き分けます。また「UU」は旧来の呼び方であり、GA4では「アクティブユーザー数」などの正式な指標名を使います。
診断指標
成果が出ない原因を調べるために確認する数値です。
- 検索表示回数
- CTR(クリック率)
- 平均掲載順位
- エンゲージメント率
- 平均エンゲージメント時間
- インデックス状況
これらは原因の切り分けに役立ちますが、それ自体を主要KPIに据えると判断がぶれます。平均掲載順位が上がっても、表示回数の少ないクエリでの上昇であれば、事業成果への影響は小さい場合があります。平均エンゲージメント時間も、長いほど良いとは限りません。
活動指標
制作や運用の活動量を表す指標です。
- 公開記事数
- リライト数
- 制作進捗率
- 取材実施数
- 計測設定完了率(数値化できる場合)
「計測環境が整っているか」といった状態そのものは、KPIではなく前提条件・確認項目として扱います。KPIとして管理する場合は、「必須イベントの設定完了数 ÷ 対象イベント数」のように数値化してから設定します。
メディア全体のKPIと記事単位の指標を分けて考える
指標を選ぶときに混乱しやすいのが、評価する対象の大きさです。メディア全体・記事群(カテゴリ)・個別記事では、確認すべき指標が異なります。
| 評価対象 | 主に確認する指標の例 |
|---|---|
| メディア全体 | 有効リード、商談、受注、売上、応募など |
| 記事群・カテゴリ | 自然検索流入、資料請求、サービスページ遷移など |
| 個別記事 | 表示回数、クリック、CTR、CTAクリックなど |
認知を目的として書いた記事1本に、直接の受注数を求めるのは適切ではありません。個別記事については「その記事に持たせた役割を果たしているか」を診断し、事業成果に近い指標はメディア全体で見ます。この切り分けができていないと、役割を果たしている記事まで「成果が出ていない記事」として扱ってしまいます。
目的別に選ぶオウンドメディアのKPI
KPIを選ぶ第一の軸は、「オウンドメディアで何を達成したいか」です。目的が変わればKGIが変わり、KGIが変われば重点管理すべき中間指標も変わります。
ここでは代表的な4つの目的について、KGI例・KPI候補・診断指標を分けて示します。表の指標をそのまま採用するのではなく、自社のKGIに接続できるかどうかで取捨選択してください。
リード・問い合わせ獲得が目的の場合
BtoBのオウンドメディアで代表的な目的の一つです。
| 区分 | 指標例 |
|---|---|
| KGI例 | 月間有効リード数、問い合わせ数、商談数 |
| KPI候補 | 資料請求数、CTAクリック率、サービスページ遷移率、フォーム完了率 |
| 診断指標 | 非ブランドクエリのクリック数、CTR、表示回数 |
売上や受注をさらに上位のKGIに設定する場合は、有効リード数・問い合わせ数・商談数もKPIになります。どこを最終目標に置くかで、同じ指標の位置づけが一段ずつずれる点に注意してください。
EC・商品販売が目的の場合
記事から商品ページへ送り、購入につなげる構造です。
| 区分 | 指標例 |
|---|---|
| KGI例 | 売上高、粗利 |
| KPI候補 | 購入数、CVR(コンバージョン率)、カート追加率、商品ページ遷移率 |
| 診断指標 | 商品ページ流入、検索クリック、エンゲージメントなど |
記事単位の購入数が少なく判断しにくい場合は、商品ページ遷移率やカート追加率など、購入の手前の行動を先に見ます。
採用が目的の場合
採用オウンドメディアでは、応募の「数」だけでなく「質」が問題になります。
| 区分 | 指標例 |
|---|---|
| KGI例 | 採用人数 |
| KPI候補 | 有効応募数、面接数、応募完了率、求人ページ遷移率 |
| 診断指標 | 採用記事流入、求人ページ閲覧、CTRなど |
応募数だけをKPIにすると、要件に合わない応募が増えても数値上は達成に見えてしまいます。採用要件を満たした応募に絞った「有効応募数」を置き、面接数まで接続しておくと、記事の内容が採用要件と合っているかを判断する材料になります。
認知・ブランディングが目的の場合
| 区分 | 指標例 |
|---|---|
| KGI例 | 認知率、第一想起率 |
| KPI候補 | ブランドクエリの表示回数・クリック数、指名検索の動向 |
| 補助指標 | 非ブランドクエリの表示回数、生成AI機能におけるインプレッション、SNS等での言及 |
この目的では、計測手段に注意が必要です。認知率や第一想起率は、GA4やSearch Consoleだけでは直接測れません。測定するにはアンケート調査やブランドリフト調査など、Webの計測とは別の手段が必要になります。
そのため実務では、ブランドクエリの表示回数やクリック数を「認知の状況を推測するための代替指標」として扱います。「ブランド検索が増えた=認知率が◯%向上した」と同一視しないでください。ブランド検索は、広告出稿・展示会・プレスリリースなど、オウンドメディア以外の要因でも増えます。
運用状態別に見るKPIの設定例
オウンドメディアのKPIは、立ち上げ期・成長期・成熟期といった運用フェーズ別に整理されることもあります。ただし、同じ運用年数でも記事数・検索流入・CVの状況は異なります。そのため本記事では、経過年数ではなく、現在の状態やボトルネックから優先して見る指標を整理します。
目的別が「何を最終成果にするか」の軸だったのに対し、運用状態別は「今どこを改善するか」の軸です。以下の5つのうち、自社が今どこにいるかを判断してください。

記事を安定して制作・公開できていない場合
記事制作の停滞が現在の主要なボトルネックになっている場合は、流入やCVだけを見るのではなく、まず活動指標を確認します。
優先して見る指標は、公開記事数、制作進捗率、リライト数、取材実施数などです。
なお、計測設定の有無は、KPIではなく前提条件として先に確認します。必要なイベントを計測していなければ、後から過去の行動を分析できません。また、既存のイベントを後からキーイベントに設定しても、キーイベントとしてのデータは過去に遡って反映されません。 (参照:イベントにキーイベントとしてマークを付ける|Google)https://support.google.com/analytics/answer/13128484?hl=ja
検索結果への表示・流入が少ない場合
記事は公開できているのに、検索結果にほとんど表示されない状態です。
優先して見る指標は、インデックス状況、検索表示回数、非ブランドクエリの表示回数、平均掲載順位、検索クエリです。
最初に確認するのはインデックス状況です。インデックスされていなければ、記事の質を議論する以前に表示されません。次に表示されているクエリを見て、想定したキーワードと大きく違う場合は、記事のテーマ設定を見直します。
表示されているのにクリックされない場合
表示回数はあるのに、クリック数が伸びない状態です。
優先して見る指標は、CTR、クリック数、平均掲載順位、クエリ、ブランド/非ブランドの別です。
あわせて、実際の検索結果画面も確認します。検索意図と記事の内容が合っているか、競合のタイトルや説明文がどうなっているか、AIによる概要などで検索結果画面の構成が変わっていないかを見ます。
ここで注意したいのは、「CTRが低い→タイトルを変更する」と単純化しないことです。CTRは掲載順位やクエリ、検索結果画面の構成にも左右されます。低いCTRだけを根拠に、タイトルが原因だと判断しないでください。
流入はあるが次の行動につながらない場合
検索流入は増えているのに、問い合わせや資料請求が増えない状態です。
見る指標は、CTAクリック率、サービスページ遷移率、フォーム開始などの成果前段のイベント、キーイベント数・セッション キーイベント レートです。キーイベントを使う場合は、対象イベントを必ず明記してください。
確認すべきは次の3点です。
- 記事の役割とCTAが合っているか(情報収集段階の記事に、いきなり問い合わせを求めていないか)
- 内部リンク先が検索意図と合っているか
- 行動のハードルが高すぎないか(入力項目が多すぎないか)
この状態でよくあるのが、新規記事の追加を優先してしまう判断です。必要な流入量があり、ボトルネックが記事から次の行動への導線にあると確認できた場合は、新規記事を増やすより既存記事の導線改善を優先します。
実務では、PVや検索流入が増えていてもサービスページへの遷移が伸びていなければ、新規記事を追加する前に既存記事のCTAと内部リンクを確認します。私自身も、この順序でボトルネックを切り分けています。
PVが増えているのに成果を説明できない状態については、オウンドメディアは意味ない?成果が出ない原因と続ける・立て直す・やめる判断基準で扱っています。
CVはあるが商談・売上につながらない場合
問い合わせや資料請求は発生しているのに、商談や受注が増えない状態です。
見る指標は、有効リード率、商談化率、受注率、平均受注単価、売上貢献です。
この段階はGA4だけでは完結しません。獲得したリードが商談に進んだかどうかはCRM(顧客管理)やMA(マーケティングオートメーション)、営業管理データ側にあるためです。ここが切れていると、「Web上のCV数は増えているのに事業は変わらない」という状態を説明できません。
| 現在の状態 | 優先して見る指標 | 主な確認対象 |
|---|---|---|
| 制作が安定しない | 公開記事数・進捗率 | 体制・工程 |
| 検索表示が少ない | 表示回数・順位・インデックス | SEO・テーマ |
| 表示されるがクリックされない | CTR・クリック・クエリ | 検索結果画面・検索意図 |
| 流入するが次へ進まない | CTA・遷移率・キーイベント | 導線・オファー |
| CVするが成果化しない | 有効リード率・商談化率・受注率 | リード品質・営業接続 |
複数の状態が当てはまる場合は、KGIへの影響が大きく、現在の成果を最も阻害しているボトルネックから優先します。ただし、計測できていない、検索結果にほとんど表示されていないなど、後続の施策を評価できない問題がある場合は、前段の問題から解消します。
KGIからKPIを設定する方法
ここまでで、指標の役割と選ぶ軸を整理しました。次は、KGIを数値の要素に分解し、KPIとその目標値を決める手順です。オウンドメディアのKPI設計でつまずきやすいのは、目標値を「前年比120%」のように感覚で置いてしまい、未達のときにどこを直せばよいか分からなくなる点にあります。KGIを掛け算の形に分解しておくと、どの要素が不足しているかを数値で特定できます。
1. オウンドメディアのKGIを決める
まず、オウンドメディアで最終的に達成したい成果を決めます。
- 月間売上高
- 月間受注件数
- 月間問い合わせ数
- 年間採用人数
KGIは、必ずしも金額や件数だけで表す必要はありません。ただしオウンドメディアの運用では、計測・評価できる形にして、達成・未達を判断できるようにしておくと進めやすくなります。「ブランド力を高める」のような状態目標のままだと、KPIを分解する起点がなく、進捗も判断できないためです。
このとき、「メディア単体で達成する数値」と「事業全体の数値」を混同しないでください。事業全体の売上高をそのままKGIに置くと、広告や営業活動の成果まで含まれてしまいます。
2. KGIを数値要素に分解してKPIツリーを作る
KGIが決まったら、それを構成する数値に分解します。BtoBのリード獲得型を例にすると、次のように整理できます。
売上高 = 受注数 × 平均受注単価
受注数 = 商談数 × 受注率
商談数 = 有効リード数 × 商談化率
有効リード数 = 資料請求数 × 有効リード率
資料請求数 = セッション数 × 資料請求CVR
これらをまとめると、次の形になります。
売上高 = セッション数 × 資料請求CVR × 有効リード率 × 商談化率 × 受注率 × 平均受注単価
KPIツリーでは、KGIとKPIの因果関係を分解して整理します。そのうえで、数式化できる指標は計算関係まで落とし込みます。本記事のBtoB例では、上記のように掛け算で分解します。掛け算の形にしておくと、どの要素をどれだけ改善すればKGIがいくら動くのかを計算できます。数式の関係まで整理しておくことで、KGIから必要な目標値を逆算しやすくなります。

3. KPIの目標値を逆算する
分解できたら、KGIの目標値から各指標の必要量を逆算します。
売上目標から逆算する場合は、次の式になります。
必要セッション数 = 売上目標 ÷(資料請求CVR × 有効リード率 × 商談化率 × 受注率 × 平均受注単価)
受注件数から逆算する場合は、平均受注単価を外します。
必要セッション数 = 目標受注数 ÷(資料請求CVR × 有効リード率 × 商談化率 × 受注率)
ここで使う資料請求CVRは、本記事では次のように定義します。
資料請求CVR = 資料請求件数 ÷ セッション数
一方、GA4の「セッション キーイベント レート」は、対象とするキーイベントが発生したセッション数を、セッションの総数で割って算出される指標です。イベントの「発生件数」と「発生したセッション数」は異なるため、両者は一致しない場合があります。同じ「CVR」という言葉で両者を扱わないでください。 (参照:[GA4] トラフィック獲得レポート|Google)https://support.google.com/analytics/answer/12923437?hl=ja
実際に数字を当てはめてみます。以下はすべて月間の数値による説明用の架空例であり、業界の目安ではありません。
- 月間売上目標:1,000万円
- 平均受注単価:100万円
- 受注率:25%
- 商談化率:40%
- 有効リード率:50%
- 資料請求CVR:2%
この場合、逆算すると次のようになります。
| 指標 | 必要な数値 | 計算 |
|---|---|---|
| 受注数 | 10件 | 1,000万円 ÷ 100万円 |
| 商談数 | 40件 | 10件 ÷ 25% |
| 有効リード数 | 100件 | 40件 ÷ 40% |
| 資料請求数 | 200件 | 100件 ÷ 50% |
| 月間セッション数 | 10,000 | 200件 ÷ 2% |
分解しておくと、施策の選択肢も具体的になります。売上を伸ばす道筋は、セッション数を増やすことだけではありません。資料請求CVR、有効リード率、商談化率のいずれかを上げる、あるいは複数を少しずつ改善する選択肢もあります。どれが現実的かを比較できる点が、分解しておく利点です。
なお、BtoBでは、ある月の資料請求が数か月後に受注へつながることもあります。商談化率や受注率は、可能であれば同じリード群の進捗を追って算出すると、月次データの時間差による誤解を防げます。
また、実績データがない立ち上げ期は、各率を仮の数値で置いて構いません。一定量の実績データが蓄積した段階で、仮置きした数値を実測値に差し替えます。
4. KPIと目標値が妥当か確認する
設定したKPIと目標値について、次の項目を確認します。
- KGIにつながっているか
- 数値を取得できるか
- 自社の施策で改善できるか
- 現実的に達成できるか
- 期限が設定されているか
- 未達のときに原因を分析できるか
この確認には、SMARTの観点が使えます。評価するのはKPIそのものではなく、KPIに設定した目標値です。その目標値が具体的で、測定可能で、達成可能で、KGIと関連し、期限付きになっているかを確認します。「エンゲージメント率を改善する」は目標値になっていません。「3か月後までに◯%にする」であれば、達成・未達を判断できます。
オウンドメディアのKPIを測定する方法
KPIと目標値が決まったら、それをどこで計測するかを決めます。オウンドメディアで主に使うのは、サイト訪問後の行動を見るGA4と、検索結果での表示・クリックを見るSearch Consoleです。商談や受注まで評価する場合は、CRMやMAなど別のシステムと接続します。ここでは、それぞれで確認する主な指標と、扱ううえでの注意点を整理します。

GA4で確認する主な指標
GA4では、サイトに到達したあとの行動を確認します。オウンドメディアで使う主な指標は次のとおりです。
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| セッション | サイトで開始されたセッションの数 |
| 表示回数(ページビュー相当) | 閲覧されたページの数。同じページの繰り返し表示も集計される |
| アクティブユーザー数 | 指定した期間中にサイトまたはアプリでアクティブだった個別ユーザーの数 |
| エンゲージメント率 | エンゲージメントのあったセッション数 ÷ 合計セッション数 |
| 平均エンゲージメント時間 | ユーザーエンゲージメントの合計時間 ÷ アクティブユーザー数 |
| キーイベント | キーイベントとしてマークしたイベントが発生した回数 |
| セッション キーイベント レート | キーイベントが発生したセッション数 ÷ セッションの総数 |
キーイベントについては、一律の位置づけをしないでください。GA4のキーイベントは、何をキーイベントとして設定したかによって役割が変わります。
- 購入をキーイベントにしている場合 → 成果指標に近い
- 資料請求をキーイベントにしている場合 → 成果、または中間成果
- CTAクリックをキーイベントにしている場合 → 先行指標
つまり「キーイベント=先行指標」とは言えません。報告するときは、どのイベントをキーイベントに設定しているかをあわせて示してください。
(参照:[GA4] ページとスクリーンのレポート|Google)https://support.google.com/analytics/answer/12926732?hl=ja (参照:[GA4] トラフィック獲得レポート|Google)https://support.google.com/analytics/answer/12923437?hl=ja
Search Consoleで確認する主な指標
Search Consoleでは、サイトに到達する前、つまり検索結果での状況を確認します。主に使うのは、表示回数、クリック数、CTR、平均掲載順位、クエリ、ページ、そしてブランド/非ブランドの区分です。
ブランド/非ブランドクエリのフィルタは、認知の状況と新規獲得の状況を分けて見るために使えます。このフィルタは2025年3月11日に導入されました。導入前のデータには遡れず、利用できる履歴はSearch Consoleの保持範囲である最大16か月です。あわせて、次の制約があります。
- 表示回数が少ないサイトでは使用できない
- サブプロパティでは使用できない
- 一部の検索語句が、ブランドまたは非ブランドとして誤って識別される可能性がある
誤分類の可能性がある以上、この数値は傾向の把握に使い、1件単位の精度を前提にした管理はしないでください。また、平均掲載順位を単独でSEOの成果とみなさないことも重要です。
(参照:パフォーマンス レポート(検索結果): ディメンションとデータのグループ化|Google)https://support.google.com/webmasters/answer/17011259?hl=ja (参照:パフォーマンス レポート(検索結果): 一般的なタスクとユースケース|Google)https://support.google.com/webmasters/answer/17010961?hl=ja
GA4とSearch Consoleの数値が一致しない理由
Search Consoleのクリック数とGA4の自然検索セッション数は、計測対象や算出方法が異なるため、完全には一致しません。数値が少し違うだけで設定ミスと判断しないでください。
Googleは、Search Consoleを「サイトに到達する前の活動」、GA4を「訪問者がサイト上でどう行動したか」を扱うツールとして説明しています。見ている範囲が違います。
差が大きい場合は、次のような要因が挙げられています。
| 主な要因 | 具体例 |
|---|---|
| 計測方法 | GA4タグの未実装、Cookie・トラッキングへの同意状況 |
| 集計条件 | タイムゾーン(Search Consoleは太平洋時間で固定)、アトリビューション、トラフィックの区分方法 |
| URL・コンテンツ | Search Consoleは正規URLに対して集計、PDFなど非HTMLページの扱い |
| 除外処理 | ボットトラフィック(GA4は既知のボットを自動的に除外) |
実務では、両者の合計値を一致させようとするのではなく、傾向が同じ方向に動いているかを見ます。片方だけが大きく動いている場合に、上記の要因を疑います。
(参照:Search ConsoleとGoogle Analyticsのデータを活用したSEO|Google Search Central)https://developers.google.com/search/docs/monitor-debug/google-analytics-search-console
商談・受注まで追う場合はCRMやMAと連携する
GA4で資料請求や問い合わせまで追えても、その後の有効リード・商談・受注は別のシステムで管理されているケースが多くあります。フォーム送信後のデータが営業側にしかない場合、Web上のCV数だけでは事業成果を評価できません。
そのため、CRM・MA・営業管理データと接続し、事業成果まで評価できる状態を目指します。接続がまだできていない場合でも、KPI設計は進められます。「Web上で追える範囲」と「営業側に確認が必要な範囲」を分けて明示し、後者は営業側から定期的に(月次など)数値を共有してもらう運用にしておきます。
AI検索の表示状況も確認する
Google検索の生成AI機能での表示状況は、Search Consoleの「生成 AI パフォーマンス レポート(検索)」で確認できます。確認できるのは、生成AI機能におけるオーガニックインプレッションです。対象となる機能はAIによる概要とAIモードで、ページ・国・日付・デバイスのディメンションでデータを見られます。Search Labsの試験運用版のデータは含まれません。
Googleは、この分析情報が2026年8月31日付けで世界中のすべてのウェブサイトにリリースされたと案内しています。ただし同じヘルプページには、段階的なリリースのため一部のプロパティではアクセスできないこと、生成AI機能で十分なインプレッション数を獲得していない場合はレポートが表示されないことも記載されています。表示されないからといって、設定不備とは限りません。
重要なのは、生成AI機能での表示は、問い合わせや売上への貢献を示すものではないという点です。可視性の指標として扱い、GA4のサイト内行動やCRM側の成果指標と組み合わせて判断します。
(参照:生成 AI パフォーマンス レポート(検索)|Google)https://support.google.com/webmasters/answer/16984139?hl=ja
KPIを運用・見直す際のポイント
KPIは設定した時点で完成するものではありません。運用してみると、想定した指標では原因が分からなかったり、メディアの状態が変わって優先すべき指標がずれたりします。KPIを機能させ続けるには、絞り込み、確認の運用、未達時の手順、見直しのきっかけを決めておくことが必要です。
KPIは必要なものに絞る
計測できる数値をすべてKPIにすると、どれを優先して改善するのか決まらなくなります。重点管理する主KPIと、そこにつながる先行指標を中心に置き、診断指標は原因分析のときに使う数値として分けておきます。
ただし「KPIは3個が正解」といった一律の数を決める必要はありません。判断の基準は数ではなく、その指標が動いたときに何をするかが決まっているかです。数値が動いても打ち手が変わらない指標は、KPIではなく参考値として扱います。
確認頻度と担当者を決める
誰がいつ確認するかを決めておかないと、数値を見る作業そのものが後回しになります。一例として、次のような頻度が考えられます。
| 頻度 | 確認内容の例 |
|---|---|
| 週次 | 制作進捗、重大な異常 |
| 月次 | 流入、遷移、キーイベント、CV |
| 四半期 | KPIそのものの妥当性 |
これは一例であり、一律の正解ではありません。更新頻度や記事数によって、適切な間隔は変わります。
KPI未達時に確認する項目を決める
未達が分かってから何を見るか考え始めると、原因の特定に時間がかかります。あらかじめパターンごとに確認項目を決めておきます。
検索流入が不足している場合 → 表示回数、平均掲載順位、CTR、クエリ
流入はあるがCVが不足している場合 → CTAクリック、サービスページ遷移、フォーム開始などの成果前段のイベント
CVはあるが売上が不足している場合 → 有効リード率、商談化率、受注率、平均受注単価
それぞれの見方は、前述の「運用状態別に見るKPIの設定例」のとおりです。
メディアの状態が変わったらKPIも見直す
メディアの状態が変わっているのに、KPIだけが以前のままになっていることがあります。よくあるのは次のようなケースです。
- 記事が十分にたまった後も、何年も記事数だけをKPIにしている
- PVが増えていれば成功と判断している
- CV数だけを見ていて、増減の原因を分析していない
- KPIを増やしすぎて、優先順位が決まらなくなっている
- 認知目的の個別記事に、メディア全体の成果を求めている
事業目標が変わったとき、メディアのボトルネックが移ったとき、計測環境が変わったときは、KPIそのものを見直すタイミングです。
オウンドメディアのKPIに関するよくある質問
オウンドメディアのKPIはいくつ設定すればよいですか?
一律の正解はありません。数を決めるより、重点管理するKPIを絞り、原因分析用の診断指標を別に持つ構成にすることが重要です。絞り込みの基準は、その数値が動いたときに打ち手が変わるかどうか、そして自社の施策で動かせるかどうかです。
オウンドメディアのPV数に目安はありますか?KPIにすべきですか?
全サイトに共通するPV数の目安はありません。必要なPV数は、KGIと自社のCVRなどから逆算して決まるため、商材や単価が違えば必要量も変わります。
KPIにすべきかどうかは、目的と現在の運用状態によります。集客の拡大が課題であればKPI候補になります。一方、売上や問い合わせをKGIとする場合、PVだけを最終成果としないでください。検索意図と自社サービスが合っていない記事によるPV増加では、問い合わせは増えません。この場合のPVは、原因を切り分けるための診断指標として使います。
KPIの目標数値はどう決めればよいですか?
業界平均をそのまま使わず、KGIと自社の実績から逆算します。公開されている平均値は、商材・価格帯・CVの定義が自社と異なることが多く、達成しても未達でも原因を説明できません。
自社の実績データがない場合は、仮説値を置いて始めます。一定量の実績が蓄積した時点で、仮説値を実測値に置き換え、必要な数値を計算し直してください。
CVが少ない場合は何をKPIにすればよいですか?
月に数件しかCVがない場合、1〜2件の増減で達成率が大きく変動し、施策の良し悪しを判断できません。その場合は、CTAクリック、サービスページ遷移、フォーム開始など、成果の前段にあたる行動をKPIに置きます。
ただし、前段の指標だけでは最終成果とのつながりを見失います。CTAクリックが増えているのにCVが増えないなら、CTAの先で離脱が起きています。CV数は確認指標として並べて見てください。
KPIはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
進捗は月次で確認し、KPIそのものの妥当性は四半期など区切りのタイミングで確認する方法が一例です。ただし期間だけで決める必要はなく、事業目標やボトルネック、計測環境が変わったときは、その時点で見直します。なお、数値が悪いという理由だけで指標を差し替えるのは避けてください。指標を変えれば数値は良く見えますが、課題は残ります。
まとめ
オウンドメディアのKPIに、万能な正解はありません。まずKGIを決め、そこから逆算して重点管理する指標を選びます。
選ぶときの軸は2つです。何を最終成果にするかという「目的」と、今どこを改善すべきかという「運用状態」です。経過年数ではなく、現在のボトルネックから優先指標を決めてください。
そのうえで、成果指標・先行指標・診断指標・活動指標の役割を混同しないこと、計測した数値を改善の意思決定につなげること、メディアの状態が変わればKPIも見直すこと。この3点を続けられれば、KPIは報告のための数字ではなく、次の打ち手を決めるための材料になります。
