検索結果の画面だけで用が済み、どのサイトも開かないまま検索を終える。ゼロクリック検索と呼ばれる行動の一つです。様々なクエリに影響が広がってきており、実際に目にする機会が増えたと感じている方も多いと思います。
担当しているオウンドメディアやサイトのアクセスが下がってきて、頭を抱えている…という方も多いのではないでしょうか。
ただし、すべての記事が同じように影響を受けるわけではありません。短い答えで用が足りる検索もあれば、概要を読んだうえで「結局どうすればいいのか」を確かめにサイトへ来る検索もあります。影響の受け方は、読者が何を求めているかと、記事が何を提供しているかによって変わるといえます。
こうした状況の中、オウンドメディアの担当者として気になるのは、この先も記事を作る意味があるのか、自社の記事をどう見直せばいいのか、というところではないでしょうか。
私も担当しているオウンドメディアで、ゼロクリック検索の影響が少しずつ大きくなっていると感じ、今後の運用の方針や、オウンドメディアの価値を再定義する必要に迫られました。
そうしたことも背景として、この記事では、ゼロクリック検索の意味と代表的な表示形式を整理したうえで、影響を受けやすい記事の傾向、流入が維持されている記事に見られた形式、そして記事を作るかどうかを決める8つの判断基準を紹介します。
同じようにメディア運営に悩んでいる方の少しでも参考になれば嬉しいです。
ゼロクリック検索とは
ゼロクリック検索とは、検索した人が検索結果に表示されたリンクをクリックせずに、その検索を終える行動のことです。
たとえば電卓で計算結果を確認してそのまま終える。あるいはお店の営業時間や天気を確認して終える。気になる言葉の意味を調べて終える。よく考えれば、私も日常的にやっていることが多いです。
ただ、混同しやすい点もあると思いますので、先に少し整理しておきたいと思います。
1. ゼロクリック検索は行動、AIによる概要は機能
ゼロクリック検索は「どのウェブサイトのリンクもクリックせずに終わった」という状態を指します。対してAIによる概要(AI Overviews)は、Googleが検索結果の上部に回答と関連リンクを表示する機能の名称です。
2. AIによる概要が表示されても、クリックされればゼロクリックではない
AIによる概要は、回答とあわせて詳細を確認するための関連リンクも提示します。Googleは、通常の検索結果以上の価値を提供できるクエリで表示されるよう設計しており、常に表示されるわけではないと説明しています。(参照:AI 機能とウェブサイト|Google 検索セントラル)
つまり、AIによる概要が出た検索がすべてゼロクリックになるわけではありません。表示されたうえでリンクがクリックされれば、その検索はゼロクリックではないということです。
3. クリックしなかった理由は「解決した」とは限らない
クリックが起きなかった検索には、いくつかの状態が混ざっています。
- 検索結果の情報で疑問が解決した
- 求めていた情報が見つからず、検索をやめた
- 別の言葉で検索し直した
そして、自社で確認できるデータからは、この3つを見分けることはできません。クリックされずに検索が終わったと分かっても、疑問が解決したのかどうかまでは判断できません。
もう一つ、気を付けたいのは外部調査の「ゼロクリック率」を見るときにも前提の確認が大切だということです。調査ごとに数え方が違うためです。
- 何をクリックとして数えるか(広告を含めるか、検索エンジン内の別サービスへの移動を含めるか)
- 何を分母にするか(検索回数、セッション、閲覧単位)
- 対象としている国、端末、調査期間
数字を引用するときは、調査主体とあわせてここまで確認しておくと、後から前提のズレで話が戻ることを避けられます。
ゼロクリック検索が増えている原因
順位は落ちていないのにクリックだけが減る。その理由を同僚や上司などにうまく説明できず、困った経験のある方は多いと思います。
背景にあるのは、検索結果の画面がリンクの一覧から「答えを返す画面」へ変わってきたことです。仕組みを分けて理解しておくと、自分の記事のどの部分が検索結果で代替され、どの部分ならページを訪れてまで読んでもらえるのかを考えやすくなります。
ここでは仕組みと背景を整理したいと思います。それぞれの表示形式の見分け方は、次の章で扱います。
検索結果の画面で直接確認できる情報が増えた
計算結果、単位の換算、人物や組織の基本情報、地図や営業時間。こうした情報は、検索結果の画面そのものに表示されます。
答えが短く、確定していて、誰が調べても同じ内容になるもの。この条件にあてはまる情報ほど、検索結果の画面に収まりやすくなります。
AIによる概要が、複数の情報をまとめた回答を返すようになった
Googleは、AIによる概要が複雑なトピックや質問の要点をすばやく把握できるようにし、詳細を確認するための関連リンクも提供すると説明しています。あわせて、関連する複数のサブトピックやデータソースに対して検索を実行し、それをもとに回答を組み立てる「クエリファンアウト」という手法に触れています。(参照:AI 機能とウェブサイト|Google 検索セントラル)
これまでは複数のページを読み比べないと分からなかったような問いにも、検索結果の画面で一定の答えが返ってくるようになりました。
短い答えが目的なら、そこで用が済む
ただし、検索する人の目的は一つではありません。
用語の意味だけ確かめたい検索なら、概要を読んだ時点で目的は果たされます。クリックせずに終わる場合があります。一方で、その内容を実際に自分の仕事へ適用したい検索では、条件や手順、具体例を確かめるためにサイトへ進みます。
同じキーワードでも、この両方が混ざっています。だからこそ、キーワード単位ではなく検索した人が「その検索で何を済ませようとしているのか」まで考える必要があります。
調査データが示していること、示していないこと
こうした変化について、AI要約とクリックの関係を調べた調査があります。
Pew Research Centerは、米国成人900人の2025年3月の閲覧データを分析し、AI要約が表示された検索ページで通常の検索結果リンクがクリックされた割合は8%、表示されなかったページでは15%だったと報告しています。AI要約があるページへの訪問のうち、要約内のリンクがクリックされた割合は1%でした。(参照:Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results|Pew Research Center)
ただし、この調査が示しているのは、AI要約が表示されたページと表示されなかったページの差です。ゼロクリックが年々増えていることを証明したものではありませんし、米国での調査である点も踏まえる必要があります。
私自身も、社内へ説明する材料として外部の数字を探した時期がありました。ただ、結局のところ必要だったのは世の中の平均ではなく、自分のメディアの主要クエリで何が起きているかでした。外部データは現象の説明に使い、判断は自社のデータで行う。この切り分けをしておくと、打ち手を外しにくくなります。
ゼロクリックの代表的な表示形式
ゼロクリックにつながる表示形式は一つではありません。ここでは代表的な4つを取り上げ、何が表示されるのか、どんな場面で検索結果だけで用が済みやすいのかを整理します。
あわせて注意しておきたいのは、これらの機能が表示されたからといって、必ずクリックされなくなるわけではないという点です。表示されたうえでサイトへ進む検索もあります。
このうち、強調スニペットやナレッジパネル、ダイレクトアンサーは以前から存在していた形式です。近年の変化として加わったのがAIによる概要で、これまで検索結果だけでは完結しにくかった問いにも答えが返るようになりました。
AIによる概要(AI Overviews)
AIが複数の情報をまとめた回答を検索結果の上部に表示する機能です。回答とあわせて、詳細を確認するための関連リンクも提示されます。
用語の意味や、複数の要素を比べたいときなど、答えが一定の長さにまとまる問いで表示されます。「その説明で十分」と判断されれば、そこで検索が終わります。
一方で、Googleは通常の検索結果に対して付加価値があるとシステムが判断した場合にのみ表示されるため、通常はトリガーされないと説明しています。(参照:AI 機能とウェブサイト|Google 検索セントラル)
すべての検索で出るものではない、という前提で見ておく必要があります。

「日本で一番長い川」の検索で表示されたAIによる概要。回答と参照先が検索結果上に表示されている。(出典:Google検索、2026年9月17日撮影)
強調スニペット
ウェブページの中から、質問への回答に適した部分が抜き出されて表示される機能です。
Googleは、検索した人が求めている回答がウェブサイトの短い文章の中で見つかると判断した場合に表示されると説明しています。表示される場所は検索結果の一番上のほか、「他の人はこちらも検索」の中や、ページの右側に表示されるナレッジグラフの情報の横もあります。(参照:Google の強調スニペットの仕組み|Google 検索 ヘルプ)
AIによる概要と混同されやすいところですが、別の表示形式です。強調スニペットは既存のページから該当部分を抜き出したもので、AIによる概要はAIがまとめた回答を提示するものになります。
定義や手順の冒頭など、短く言い切れる部分が抜き出されるため、「意味だけ知りたい」という検索では読んだ時点で用が済みやすくなります。
ナレッジパネル
人物、組織、場所などについて、概要や基本情報がまとめて表示される枠です。
Googleは、ナレッジパネルをナレッジグラフに存在する対象(人、場所、組織、物事など)を検索したときに表示される情報ボックスだと説明しています。自動的に生成されるもので、表示される情報はウェブ上のさまざまな情報を元にしています。(参照:ナレッジパネルについて|Google ナレッジパネル ヘルプ)
生年、所在地、公式サイトといった基本情報を確認したいだけの検索では、この枠を見て終わります。
なお、店舗や事業所の情報が表示されるビジネスプロフィールは、見た目が似ていますが別の仕組みです。

「夏目漱石」の検索結果。画面右側の概要欄に人物情報がまとめられている。(出典:Google検索、2026年9月17日撮影)
ダイレクトアンサー
計算結果や単位の換算など、答えが確定している問いに対して、検索結果の画面上で答えそのものが表示される形式です。
本記事では電卓を例にします。「100×1.1」と検索すると計算結果が表示され、どのサイトへも移動せずに確認が終わります。
ここで扱われる情報は、答えが一つに定まり、誰が調べても同じ内容になるものです。もともとサイト側にクリックが発生しにくい領域だといえます。

「100×1.1」の検索で表示された電卓。検索結果上で計算結果を確認できる。(出典:Google検索、2026年9月17日撮影)
ゼロクリックの影響が大きい記事の傾向
海外の調査を見ると、クリックを伴わない検索が相当な割合を占めていることが分かります。
SparkToroがSimilarwebのクリックストリームデータを分析した結果では、2026年1〜4月の米国Google検索のうち68.01%が、どこへもクリックせずに終了したとされています。対象はデスクトップとモバイルのブラウザ利用で、Googleのモバイル検索アプリ内の検索は含まれていません。(参照:In 2026, Less than One Third of Google Searches Still Send a Click|SparkToro)
ただし、この数値をそのまま日本や自社サイトへ当てはめることはできません。また、この調査だけでは、AIによる概要の影響を単独で特定することもできません。
ここでは影響を受けやすい記事の傾向を整理したうえで、自分の記事が影響を受けているかどうかを確かめる手順を紹介します。
こうした数字を見ると、「〜とは」のような用語の意味を説明する記事はもう作らないほうがいいのか、と考える方もいると思います。ただ、注意したいのは影響の大きさを決めているのは、その検索で読者がどの程度の情報を求めているかということです。これに関しては、後述します。
短い回答で検索目的が満たされやすい内容
ゼロクリック検索、つまり記事を開かなくても、検索結果の画面だけで答えが得られてしまいやすいのは、例えば次のような内容です。
- 用語の単純な定義
- 短く汎用的な例文
- 基本情報だけをまとめた解説
- 答えが一つに定まる数値や日付
これらに共通しているのは、読み終えた後に読者の手元で作業が発生しにくいことです。知れば用が済むため、概要やまとめられた情報で足りてしまいます。
ただし、短い例文でもコピーして使う場面はあります。作業があるかないかだけで、影響を受ける記事と受けない記事がきれいに分かれるわけではありません。
タイトルの型で分類しない
ここで気をつけたいのが、「〜とは」「〜の書き方」「例文」といったタイトルだから流入が落ちる、と考えてしまわないことです。
たとえば同じ例文記事でも、汎用的な短文を並べただけの記事と、使う場面や条件、そのまま使える完成形まで示している記事では、読者にとっての役割が違います。前者は概要を読んだ時点で代わりが利きますが、後者は「自分のケースに合うものを選ぶ」という作業が残ります。
なお、ここで挙げているのは私が運用に関わるメディアで確認した範囲の観察と、そこから考えている影響の受け方です。
私自身、担当メディアの記事を見直したときに同じ型の記事が別々の動きをしていて、タイトルでの分類では説明がつかないと感じました。次の章では、動きが分かれた記事に何があったのかを見ていきます。
自社の記事への影響を確かめる手順
自分の記事を見直すときは、次の順で確認します。
- ページと主要クエリをそろえる。記事単位ではなく、どのクエリで流入していたかまで特定する
- 比較期間、端末、国などの条件をそろえる。前年同月などと比較し、季節要因の影響を確認する
- 順位、表示回数、CTR、クリック数を分けて見る。まとめて「流入が減った」と扱わない
- 計測上の問題と、検索掲載上の問題を分けて確認する。GA4の設定変更やタグの不具合と、インデックス未登録などは別の問題です
- 実際に検索してみる。対象のクエリでどの表示形式が出ているかを自分の目で見る
Googleも、トラフィックの減少を調べる際には、アルゴリズムの更新、技術的な問題、季節性や興味の変化、サイトの移転など複数の原因を確認するよう案内しています。(参照:Google 検索トラフィックの減少をデバッグする|Google 検索セントラル)
この手順で原因を絞り込める場合もあります。ただし、これだけでゼロクリックやAIによる概要の影響を確定できるわけではありません。
「順位が同じなのにクリックが減った=AIが原因」とは言えない
ここは誤解しやすいところかもしれません。
平均掲載順位が変わっていなくても、流入してくるクエリの構成そのものが入れ替わっている場合があります。逆に、順位が改善したことで流入が維持され、影響が見えにくくなっている場合もあります。
先に書いたとおり、自社のデータからクリックされなかった理由を見分けることはできません。確認できるのは、自社サイトの表示回数やクリック数などです。ほかのサイトがクリックされたのか、どこもクリックされなかったのかまでは分かりません。
そこから原因を一つに決めてしまうと、本来は別の打ち手が必要な問題を見落とします。
AI機能での表示を分けて確認する方法
なお、Search Consoleには生成AIパフォーマンスレポートがあり、AIによる概要とAIモードでの表示回数を確認できます。ここで分かるのは、自社サイトへのリンクがAI機能内で表示された回数です。ページ、国、日付、デバイスごとにデータを見ることが可能です。
Googleは、このレポートが2026年8月31日付で世界中のすべてのウェブサイトへリリースされたと案内しています。一方で、段階的なリリースのためアクセスできないプロパティがあること、生成AI機能での表示回数が十分でない場合はレポートが表示されないことも記載されています。(参照:生成 AI パフォーマンス レポート(検索)|Search Console ヘルプ)
確認できるのは表示回数です。AI機能経由のクリック数やCTRが分かるものではありません。
あわせて、Search ConsoleのCTRから「1−CTR=ゼロクリック率」を計算することはできません。
Search ConsoleのCTRは、自社ページが表示された回数のうち、自社ページがクリックされた割合です。残りの中には、どこもクリックされなかった検索だけでなく、競合サイトや広告がクリックされた検索、別の言葉で検索し直した検索も含まれています。自社がクリックされなかったことと、誰もクリックしなかったことは別です。
GA4についても同じです。GA4が記録するのはサイトへ来た後の行動なので、来なかった人の動きは残りません。検索画面で何が起きたかを、GA4のデータから特定することはできません。
ゼロクリックの影響を受けそうだけど流入が変わらない記事とは
ここまでは、影響を受けやすい記事の話でした。一方で、影響を受けそうなテーマなのに、流入が落ちていない記事もあります。
私が運用に関わっているメディアでも、流入が大きく変わらない記事や、むしろ増えている記事があります。この章では、その記事に共通していた形式と、そこから考えられる読者の使い方を紹介します。
ここから紹介する内容には、2つ前提があります。
ひとつは、これが運用上の観察であって、検証結果ではないことです。流入の変化には検索需要や順位の変動も関係します。ゼロクリック検索の影響だけを切り分けて測ったものではありません。
もうひとつは、これが「AIには作れない記事を探す」話ではないことです。考えたいのは、読者が検索結果ではなくサイトで確認したり、選んだり、使ったりする理由のほうです。
流入が維持・増加している記事の事例
私が運用に関わるメディアで確認した範囲では、次のような形式の記事で、流入の維持や増加が見られました。
| 記事の形式 | 提供している内容 | 確認された傾向 |
|---|---|---|
| お題やクイズなどの一覧 | その場で選んですぐ使える素材がまとまっている | 流入の維持・増加が見られた |
| 場面別の具体的な例文 | 短い言い回しだけでなく、場面に合う完成形を探せる | 流入が大きく変わらないものがあった |
| 印刷用シートや、実務で使う資料・手順 | 読んだ後に印刷・記入・参照して使える | 流入が増えているものがあった |
| 概要だけでは実行できない作業の具体的な手順 | 「結局どうすればよいか」に答え、作業中に参照できる | 流入が大きく変わらない傾向があった |
注意しておきたいのが、2つ目の例文記事です。
例文記事であれば流入が維持される、という話ではありません。同じ例文記事でも動きは分かれていました。短い言い回しを並べただけの記事と、場面や条件つきの完成形を並べた記事では、読者にとっての役割が違います。文字数の多さだけが理由とは判断できません。
また、印刷用シートを置いたから増えた、という因果を確かめたわけでもありません。素材を追加した記事と追加しなかった記事を比較実験したものではなく、結果として増えていた記事に、そうした要素が入っていた、という話です。
事例から考えられる読者の利用目的
なぜこれらの記事はクリックして開かれているのか。ここからは仮説になります。
共通しているのは、読んだ後に読者の手元で何か作業が発生することだと考えています。
- 要点を知るだけでなく、そのまま使える素材を探している
- 自分の条件や場面に合う例を、複数の中から選びたい
- 作業を進めながら、手順や完成形を手元で確認したい
- AIに条件を伝えて生成・修正するより、目的に合う完成品を開くほうが早い場面がある
4つ目は、実感としても納得できるところです。条件を言葉にして伝え、出てきたものを直す手間より、既にある完成形から選ぶほうが早いことは少なくありません。
2つの役割で整理する
記事の役割を、次の2つに分けて考えると判断しやすくなります。
- 知りたいことに答える役割
- 実際の作業を助ける役割
前者は検索結果の画面で代替されやすい部分です。後者は、読者の手元に持っていく必要があるため、開かれる理由が残ります。
ただし、この2つは二者択一ではありません。同じ記事が両方の役割を持つことも、同じ読者が場面によって使い分けることもあります。定義を確認しに来た人が、そのまま例文を持ち帰ることもあるわけです。
量を競う話ではない
ここで気をつけたいのが、「AIが一度に出せる量を超えればいい」という方向へ進まないことです。
量と具体性が必要なのは、読者が選択肢を比べたり、使う条件を判断したりするためです。その範囲を超えて例を増やしても、選びにくくなるだけで役には立ちません。件数ではなく、選ぶための情報がそろっているかどうかだと思います。
同じく、答えを出し惜しみしてクリックを誘う、という話でもありません。概要で足りる読者はそこで終わってよく、足りない読者に必要な詳細を届ける。記事の役割分担としては、そのように考えています。
他ジャンルへの応用と記事づくりの工夫
ここからは実績の紹介ではなく、前の観察をもとにした企画案です。以下は他ジャンルで考えられる応用例であり、流入維持の効果を確認したものではありません。
| 応用する型 | 他ジャンルで考えられる例 | 概要に加えて用意するもの |
|---|---|---|
| そのまま使える一覧 | 社内研修の問いかけ例、ワークショップのお題 | 目的別の分類、使う条件、進行時の注意点 |
| 場面別の具体的な例文 | 顧客への案内メール、社内連絡文 | 誰に・どんな状況で送るか、完成例、差し替える箇所 |
| 記入・確認に使うシート | 新入社員の受け入れチェックリスト、記事公開前チェックシート | チェック項目、記入例、完了の判断基準、利用方法 |
| 実行を助ける手順 | ソフトウェアの初期設定、社内申請の進め方 | 前提条件、必要な準備、操作順、つまずいた場合の対応、完了確認 |
右側の列が重要です。一覧や例文を並べるだけでは、読者がサイトを訪れる理由になりにくいと考えています。使う条件、差し替える箇所、具体的な例、手順、完了の判断、といったような情報があって読者が実際に使うことが可能になります。
既存記事を見直す進め方
例えば、新しく記事を作らなくても、手持ちの記事で試すことが可能です。
- 読者が記事を読んだ後に行う作業を、ひとつ決める
- 概要を理解しただけでは分からない箇所を洗い出す
- その不足に合う完成例、手順、チェック項目を加える
- 読者が実際に使えるか、条件や完了の判断まで書けているかを確認する
たとえば「顧客への案内メールの書き方」という記事であれば、基本の説明は残したうえで、場面別の完成例、変更すべき箇所、送信前のチェックを加える、といった形になります。これは改善案であり、実施して成果が出た事例ではありません。
なお、すべての記事に大量の例文やダウンロード資料を足すことをおすすめしているわけではありません。読んだ後に作業が発生しない記事もあります。1の「読んだ後に行う作業」が出てこない記事であれば、そこで手を止めるのが妥当だと思います。
ゼロクリック時代に記事を作るべきか判断する8つの基準
流入が見込めないテーマは、もう記事にしない、という判断はしないほうが良いでしょう。
ゼロクリックの影響を受けそうなテーマであっても、読者の理解を助けるために必要な記事や、自社の専門性を伝えるうえで欠かせない記事はあります。流入の見込みは判断材料のひとつであって、それだけで決めてしまうのは少々乱暴です。
例えば、私は記事を作るかどうかを次の8つで確認しています。
| 判断項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| ① 想定読者に必要か | 読者が実際に困っていること、繰り返し質問されることか |
| ② メディア・事業との関係があるか | メディアの目的や、サービスの理解・検討につながるテーマか |
| ③ 自社の専門性を示すうえで必要か | 専門領域の基本的な疑問に答え、自社の知識・経験・判断基準を伝えるために欠かせないテーマか |
| ④ AIの回答で引用・参照を狙う価値があるか | 想定読者がAIに尋ねるテーマについて、自社が参照元として提供したい情報があるか |
| ⑤ サイトを訪れる理由を作れるか | 検索結果で概要を知った後にも、確認・比較・実行したいことが残るか |
| ⑥ 自社ならではの情報を加えられるか | 経験、事例、判断理由、失敗から得た知見を示せるか |
| ⑦ 独立した記事にする必要があるか | 既存記事と重複せず、一つの記事として説明すべき内容があるか |
| ⑧ 公開後も維持できるか | 情報の確認・更新にかかる負担を継続して引き受けられるか。更新担当や確認先が明確か |
点数をつけたり、○が何個以上なら作る、といった使い方は想定していません。
順番としては、まず①〜③で読者と事業にとっての必要性を確認します。そのうえで④⑤で記事の役割を、⑥⑦で独立させる意味を、⑧で公開後の負担を見る。この順で見ていくと、判断の根拠が整理されます。
補足しておきたい点が3つあります。
専門性を伝えるための基礎記事について
自社の説明を理解する前提になるテーマ、相談前によく出てくる疑問、自社の判断基準を示すテーマ。こうした記事には、流入数だけでは評価しきれない役割があります。
Googleも、ランキングを操作することを目的として作成されたコンテンツではなく、ユーザーにメリットをもたらすことを目的として作成された、有用で信頼できる情報を検索結果の上位に掲載できるよう設計していると説明しています。(参照:有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成|Google 検索セントラル)
ただし、基礎記事を揃えればサイトの専門性が自動的に高まる、順位が上がる、という話ではありません。③で確認したいのは本数ではなく、自社が説明する必要性があるかどうかです。
AIの回答で引用・参照を狙う記事について
想定読者がAIに尋ねそうなテーマに、自社として提供したい知見があるなら、公開する意義は検討できます。
ここで分けて考えたいのが次の3つです。
- 引用・参照を狙うこと
- 実際に引用されること
- 引用された結果、訪問や問い合わせにつながること
狙ったからといって引用されるとは限りませんし、引用されたからといって訪問につながるとも限りません。先に触れたPewの調査でも、AI要約があるページへの訪問のうち、要約内のリンクがクリックされた割合は1%でした。
なお、GoogleはAI機能に表示されるための追加の要件や特別な最適化は不要で、従来の検索と同じ基本が適用されると説明しています。(参照:AI 機能とウェブサイト|Google 検索セントラル)
④は「AI向けの特別な記事を作る」という項目ではなく、そのテーマで参照元になりたいかを確認する項目だと考えてください。
記事を作る以外の選択肢
必要な情報だと判断しても、新規記事にするとは限りません。
- 既存記事に追記すれば足りる
- 独自に提供できる情報が乏しい
- 公開後に情報を維持できる見込みがない
こうした場合は、独立した記事を作らない判断もあります。とくに⑧は見落としやすいところです。作った時点では書けても、更新を続けられなければ、情報が古いまま残ります。
8つ全部を毎回埋める必要はありません。①で止まる企画もあれば、⑧で見送る企画もあります。
まとめ
ゼロクリック検索とは、検索結果に表示されたリンクをクリックせずに、その検索が終わることです。答えが短く確定している情報ほど、検索結果の画面で用が済みます。
影響の受け方は、記事のタイトルやジャンルでは決まりません。その検索で読者がどこまでの情報を求めているか、記事がそれに応えているかで変わります。まずは読者の目的と、自分の記事が果たしている役割を確認することが大切でしょう。
例えば、私が運用に関わるメディアで見ている範囲では、読んだ後に実際の作業を助ける記事、そのまま使える素材を持つ記事に、流入の維持や増加が見られました。ただしこれは、すべての記事に当てはまるとはいえないでしょう。あくまで、一例としてご参考にしていただけたらと思います。
最後にひとつ、おすすめしたいことがあります。
いま抱えている記事の候補か、すでに公開している記事をひとつ選んで、8つの基準で確認してみてください。全部を埋める必要はありません。①から順に見ていくだけでも、その記事に何が足りないのか、そもそも独立させる必要があるのかが整理できます。
オウンドメディア運営にはなかなか厳しい状況になってきてはいますが、メディアの価値は変わりません。より一層、自社の情報を正しく適切に届けることが必要になってきていると思っています。引き続き、頑張っていきましょう。
参考資料・出典一覧
- (参照:AI 機能とウェブサイト|Google 検索セントラル)https://developers.google.com/search/docs/appearance/ai-features?hl=ja
- (参照:Google の強調スニペットの仕組み|Google 検索 ヘルプ)https://support.google.com/websearch/answer/9351707?hl=ja
- (参照:ナレッジパネルについて|Google ナレッジパネル ヘルプ)https://support.google.com/knowledgepanel/answer/9163198?hl=ja
- (参照:Google 検索トラフィックの減少をデバッグする|Google 検索セントラル)https://developers.google.com/search/docs/monitor-debug/debugging-search-traffic-drops?hl=ja
- (参照:生成 AI パフォーマンス レポート(検索)|Search Console ヘルプ)https://support.google.com/webmasters/answer/16984139?hl=ja
- (参照:有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成|Google 検索セントラル)https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/creating-helpful-content?hl=ja
- (参照:Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results|Pew Research Center)https://www.pewresearch.org/short-reads/2025/07/22/google-users-are-less-likely-to-click-on-links-when-an-ai-summary-appears-in-the-results/
- (参照:In 2026, Less than One Third of Google Searches Still Send a Click|SparkToro)https://sparktoro.com/blog/in-2026-less-than-one-third-of-google-searches-still-send-a-click/
いずれも2026年9月20日に内容を確認しています。
各ページの最終更新日は、AI機能とウェブサイトが2025年12月31日、検索トラフィックの減少をデバッグするが2025年12月18日、有用で信頼性の高いコンテンツの作成が2025年12月18日です。生成AIパフォーマンスレポートは、2026年8月31日に全世界へリリース済みと案内されています。
