中小企業にオウンドメディアが必要な理由とは?事例と兼務で回す始め方

中小企業のオウンドメディア

中小企業でオウンドメディアを任されたものの、

「本業と兼務で回せるのだろうか?」

「費用や手間はどのくらいかかる?」

といった迷いのある担当者の方も多いのではないでしょうか。

オウンドメディアは、顧客の疑問に答え、自社の強みを知ってもらう接点になります。一方で、目的や体制が決まらないまま始めると、記事を公開しても問い合わせにつながらず、担当者だけが疲弊することもあります。

この記事では、次の内容を解説します。

  • 中小企業にオウンドメディアが必要な理由
  • 中小企業のオウンドメディア活用事例
  • 始める前に確認したい課題
  • 費用と工数の考え方
  • オウンドメディアの始め方
  • 兼務・少人数で運用する体制の作り方
  • 問い合わせにつなげる改善の進め方

私が1人でオウンドメディアを運営してきた経験も、条件を添えて紹介します。ここは外注しやすい作業、ここは社内で決めるべき部分、などもお伝えできたらと思います。自社の時間・予算・経験に合わせて、何から始めるかを判断する材料にしてください。

目次

中小企業にオウンドメディアが必要な理由

オウンドメディアとは、企業が自ら保有・運営する情報発信媒体を指します。この記事で扱うのは、企業サイト内のコラムや企業ブログなど、記事を中心とするWebメディアです。

オウンドメディアの活用目的には採用などもありますが、ここでは主に集客、比較検討の支援、問い合わせの獲得を扱います。

また、オウンドメディアは必ずしもすべての中小企業に導入をおすすめするものではありません。お金も時間もかかるものですから、本当に自社が取り組む価値があるのかどうか、見極めることが大切です。

まずは、オウンドメディアが果たせる役割を3つに分けて解説します。

顧客の疑問に答え、自社を知ってもらう接点をつくれる

商品や会社をまだ知らない人は、商品名ではなく、困りごとで検索することが多いでしょう。例えば、工場の暑さに悩む管理者であれば、製品名より先に、暑さ対策の方法そのものを調べるはずです。

こうした困りごとの解決につながる情報を届けることで、自社を知ってもらう接点をつくることが可能です。オウンドメディアの発信の対象は商品紹介だけではありません。選び方、活用方法、導入時の注意点なども記事になります。

オウンドメディアを成功させるためのポイントの一つは、アクセス数そのものを目的にしないことです。自社の顧客になり得る人と接点をつくれているかを確認するようにしましょう。

自社の専門性や強みを伝え、比較検討を支えられる

商品・サービスの紹介ページや営業資料には、載せられる情報量に限りがあります。オウンドメディアの記事であれば、紹介ページでは伝えきれないノウハウや、具体的な活用場面まで補足できます。

他社の商品・サービスとの違いも、機能の比較だけでなく、顧客の課題や利用場面と結びつけて説明することが可能です。「どのような場面で、なぜ自社が合うのか」が伝わると、比較検討を支える材料になるでしょう。

記事は、問い合わせ前の疑問解消に役立つほか、営業担当者が商談で説明に使うこともできます。

AI検索も踏まえ、自社ならではの情報を蓄積する

オウンドメディアに記事として蓄積した情報は、顧客の役に立つ自社の資産になります。とくに、自社の経験や知見に基づく情報は、他社が同じ形では出せない、自社ならではの貴重なコンテンツになるでしょう。

また、最近ではAI検索(AIO、GEO、LLMOなど言い方は様々)でも、自社ならではの記事は情報が届く経路の一つになります。ただし、AIの回答で引用されることや、そこからの流入が保証されるわけではありません。

なお、Googleは、SEOのベストプラクティスはAIによる概要やAIモードでも引き続き有効であり、表示されるための追加の要件や特別な最適化は必要ないと説明しています。(参照:AI 機能とウェブサイト|Google 検索セントラル)https://developers.google.com/search/docs/appearance/ai-features?hl=ja

AI検索と流入の関係については、ゼロクリック検索とは?流入への影響と記事を作る8つの判断基準で詳しく解説しています。まずは、自社の顧客がどのような疑問を持っているかを書き出してみてください。

中小企業のオウンドメディア活用事例

ここでは、中小企業が運営するオウンドメディアを2つ紹介します。成果の大きさだけでなく、情報の集め方、コンテンツの作り方、サービスへの案内方法に注目してください。

もちろん、企業規模や運営の条件は会社ごとに違います。同じやり方をしても、同じ成果が出るとは限りません。自社に取り入れられそうな工夫を探すつもりで、読んでいただけたらと思います。

なお、サイトから読み取れる工夫と、会社や支援会社が公表している体制・成果は、分けてご紹介します。いずれも2026年9月26日に確認した内容です。

五常|顧客の悩みからテーマを設計し、外部と運用体制をつくる

項目内容
事業物流機器、建築工事、環境改善製品などを扱う株式会社五常
メディアの読者工場・倉庫の管理者など
企業規模公式の会社概要の掲載値は社員22名、資本金1,000万円
外部との分担支援会社が、対象読者や強みを踏まえたコンテンツ設計、サイト構築、コラムの継続運用を支援
サービスへの導線製品紹介ページ、問い合わせ窓口、ショールーム見学への案内

支援会社タクトの制作事例によると、五常は製品サイトへの流入は獲得できていた一方、「熱中症対策を何から始めればよいか分からない」層との接点が課題でした。そこで、工場・倉庫の管理者に向けて、課題を認識する前の段階から届くコラムを制作・運用しています。(参照:株式会社 五常様 オウンドメディア新規制作|株式会社タクト)https://tactweb.co.jp/works/work221.html

同社の担当者インタビューでは、立ち上げ時は社内に経験者がおらず、専任の担当者もいない状態で相談したと説明されています。支援会社と対象読者や自社の強みを整理していく中で、ターゲットを絞り、何を伝えるべきかを言語化する視点が社内でも深まったと担当者は話しています。(参照:株式会社五常様インタビュー|株式会社タクト)https://tactweb.co.jp/interview/gojoh/

コンテンツの例として、食品工場の暑さ対策の記事では、暑くなる原因、個人・運用での対策、設備対策、設備選定時の注意点を順に整理しています。製品名を知らない段階の読者も想定したテーマです。(参照:食品工場の暑さ対策|五常)https://necchusho.jp/column/column-343/

なお、現在の担当人数や社内工数、問い合わせ数・売上の変化は、今回確認した資料からは分かりませんでした。

この事例から取り入れやすいと私が考えるのは、次の2点です。

  • 構成案を社内で完成させる前から、顧客の悩みや自社の情報を外部と共有して相談する
  • 製品の説明だけでなく、顧客が調べ始める段階の疑問をテーマにする

テーマの選び方と外部との分担は、後述します。

アート電子「ノイズ対策.com」|自社の技術知識を記事にし、資料請求・相談へつなぐ

項目内容
事業プリント基板の設計・製作などを手がけるアート電子株式会社
メディアの読者プリント基板の設計・開発に関わる技術者など
企業規模公式の会社概要の掲載値は社員40名、資本金1,000万円
サイトの構成ノイズの基礎知識、設計のポイント、用語集、技術資料など
サービスへの導線ハンドブックの無料提供、資料請求・問い合わせ窓口、自社サービスの案内

ノイズ対策.comでは、設計上の疑問ごとに記事を分けています。例えば「直角配線を避けて信号ラインを設計する」という記事では、直角に配線するとノイズが出やすくなる理由と、45°に曲げて配線する対処を解説しています。記事の下には、自社の設計開発サービスへの案内があります。(参照:直角配線を避けて信号ラインを設計する|ノイズ対策.com)https://www.noise-counterplan.com/wp/point/28/

問い合わせページでは、ノイズ対策のノウハウをまとめたハンドブックの無料提供と、問い合わせを同じフォームで受け付けています。(参照:お問い合わせ・資料請求|ノイズ対策.com)https://www.noise-counterplan.com/inquiry/

2019年7月8日公開の担当者インタビューでは、担当者がWebコンテンツやハンドブックの作成、問い合わせ対応、展示会、メルマガ配信などを担当していると説明されています。同インタビューには問い合わせや受注額の増加も報告されていますが、MAツール、メルマガ、営業活動を含む施策全体の結果です。オウンドメディア単独の効果や、現在の実績を示すものではありません。現在の運営人数や記事制作の外注範囲も未確認です。(参照:アート電子株式会社 導入事例|カイロスマーケティング株式会社)https://www.kairosmarketing.net/kairos3/showcase/artdenshi

技術分野や同じ制作量を再現する必要はありません。自社に置き換えるなら、例えば次のような進め方が考えられます。

  • 顧客からよく聞かれる質問や、社内で説明に使っている資料を洗い出す
  • 社内の情報・ノウハウを、顧客の疑問ごとに記事として整理する
  • 記事から、関連する資料や相談先を案内する

この形は多くの業種で応用できるので、全記事を一度にそろえず、自社で情報を用意・確認できるテーマから始めてみてください。

中小企業がオウンドメディアを始める前に確認したい課題

オウンドメディアは、立ち上げるまでより、立ち上げた後に続けていくほうが大変なものです。立ち上げ前に、目的、継続に必要な予算と時間、情報提供や判断の体制を確認しておきます。

とくに中小企業では、オウンドメディアを兼務で担当するケースも多いのではないでしょうか。兼務だからこそ、仕事を切り出して外注することも重要だと考えます。その際、ポイントになるのが外注予算です。外注予算があれば任せられる工程は増えますし、予算がなければ自分で担う範囲が広がります。担当者だけで抱え込まず、外注予算も含めて、期待する成果と見直し方を経営者と共有しておきましょう。ここでは、経営者と話し合っておきたいことを3つ解説します。

目的と成果の見方が曖昧になっていないか

オウンドメディアを運営していると、PVなどのアクセス数が気になると思います。ただ、アクセスが増えても、問い合わせなどの成果につながらなければ、事業への貢献は見えにくいものです。アクセスの先にどのような成果を求めるのか、先に決めておきましょう。

このとき、問い合わせの完了と、サービスページへの移動は、別の段階の行動として扱います。サービスページを見た人が、すべて問い合わせるわけではないためです。

目的、確認する指標、予算、時間は、経営者と担当者で共有しておきます。あわせて、段階ごとに確認する内容を分けておくと、評価のずれが起きにくくなるでしょう。

  • 立ち上げ直後:検索での表示や、どのように読まれているか
  • 実績が蓄積してから:問い合わせへの貢献

成果が出ないときに続けるか、やめるかの判断基準は、オウンドメディアは意味ない?成果が出ない原因と続ける・立て直す・やめる判断基準でまとめています。

成果が出るまで続ける予算と時間を確保できるか

公開直後から安定した成果が出る、とは考えないほうがよいでしょう。とくに新しくサイトを立ち上げる場合には、時間がかかると考えておきましょう。

また、制作だけでなく、確認、更新、分析に使う時間も確保しておく必要があります。

そのうえで、定期的に確認する時期と、方針や体制を見直す条件を決めておきます。短期間で集客が必要な場合は、広告や展示会など、ほかの施策との役割分担も考えてみてください。

見直し条件は、例えば次のように経営者と共有します。

状況見直すこと
社内確認が滞り、公開が遅れる確認者、期限、制作本数、依頼範囲
想定と異なる検索語で読まれる読者設定、テーマ、記事内容
読まれてもサービスへの送客がない事業との関連性、案内方法

一律に「一定期間は成果を見ずに待つ」と決めるのではなく、何を確認し、いつ方針や体制を見直すかを事前に合意しておくことが大切です。各状況でのデータの見方や改善方法は、後述します。

担当者の判断範囲と、必要な情報を集める方法が決まっているか

担当者が自分で決められる内容と、経営者や現場への確認が必要な内容を整理します。例えば、記事の表現は担当者が決め、価格や他社との比較に触れる記述は経営者が確認する、といった分け方です。

あわせて、顧客からの質問、商品情報、専門知識、事例を、誰から集められるかを確認しておきます。社内の情報提供、内容確認、公開承認にも、最低限の時間が必要です。この時間が確保できないと、原稿ができても公開が止まってしまいます。

詳しい役割分担や進め方は、体制の章で説明します。立ち上げ前に、ここまでの3点を経営者と一度話し合い、意識合わせをしておくことをおすすめします。

中小企業のオウンドメディアにかかる費用と工数

持ち時間から制作本数を逆算する図

オウンドメディアの費用は、外部への支払額と、社内に残る作業時間の両方から計画します。外注したとしても、依頼や原稿の確認など、社内でやる作業は意外と残るものです。

既存の会社サイトに記事を追加する場合と、新しくサイトを構築する場合とでは、初期費用が変わります。人員の限られる中小企業では、制作本数を先に決めるより、必要な作業と、担当者が使える時間から考えたほうが、無理のない計画になるでしょう。

立ち上げ費用と継続的な運用費用を分けて考える

費用は、次の3つに分けて整理すると見通しを立てやすくなります。

費用の区分主な項目
初期費用方針設計、サイト制作・改修、計測設定、初期記事
継続費用記事制作、編集、分析、保守、利用ツール
追加費用取材、専門家への依頼、画像制作、入稿、規定外の修正

追加費用にあたる項目は、見積もりの基本料金に含まれていないこともあります。外部に依頼する前に、どこまでが依頼範囲かを確認しておきましょう。

内製・外注・AI活用を、社内工数も含めて比較する

まず、工程ごとに社内と外部のどちらが担当するかを決めます。AIは、内製・外注のどちらでも使える手段として整理すると考えやすくなります。

ただ、どの方法を選んでも、社内の時間はゼロにはなりません。

  • 外注する場合:依頼、情報提供、確認の時間
  • AIを使う場合:指示、出力の確認、修正の時間

記事を作る時間だけでなく、公開までの総工数で負担を比べてみてください。

私の場合、現在はAIを活用して自分で記事を制作することが多くなりました。AIの指摘を確認する手間は増えましたが、記事制作からWordPressへのアップまでの総工数は、体感で2〜3割ほど減っています。とくに短くなったと感じるのは、競合上位記事の確認・整理です。実測値ではなく、あくまで私個人の体感です。

確認・編集に使える時間から制作本数を決める

オウンドメディアの制作本数は、担当者本人が使える時間から逆算します。手順は次のとおりです。

  1. 情報提供、依頼、確認、編集、入稿・公開前確認など、本人が担う工程を洗い出す(内製する工程があれば、調査・構成・執筆、AIへの指示、出力の確認・修正も含める)
  2. 本人が月に確保できる時間から、分析や打ち合わせなど、記事ごとの制作とは別に必要な時間を差し引く
  3. 残った時間を、1記事あたりの本人の作業時間で割る

このとき、月の確保時間と1記事あたりの作業時間は、どちらも担当者本人の時間でそろえるのがポイントです。ほかの社員や外注先の作業時間は含めず、必要な協力時間や確認日程は別に確保します。

仮に、次の条件で計算してみます。

担当者本人が月に確保できる時間が20時間、そのうち分析・打ち合わせなどに6時間、1記事あたりの本人の作業に7時間かかる場合

(20時間−6時間)÷7時間=計算上は月2記事

1記事あたりの7時間には、調査・構成・執筆、AIへの指示・確認・修正、外注時の情報提供・依頼、編集・公開前確認など、本人が担当する工程を含めます。あくまで計算方法の例ですので、この数字を目安にする必要はありません。この計算では時間を使い切るため、実際の計画では追加の修正や突発業務の余裕も見込んでください。

テーマによっても、1記事あたりの時間は大きく変わります。私の経験では、法律・制度に関する記事は、公的資料を探し、読み解き、対象のケースに当てはまるかを判断するまでに時間がかかります。

参考までに、私が専任の担当者として、新規記事の執筆をすべて外注し(キーワード選定、構成案・骨子作成は私が担当)、制作に集中できた月には、新規約20記事を公開し、約10記事をリライトしていました。ただし、これは過去の時期に、専任かつ新規執筆を全件外注するという条件で出た数字です。現在のAIを活用した自分での制作とは時期も運営条件も異なりますので、兼務の方は参考程度にご覧ください。

まずは最初の数記事で、実際にかかった時間を記録し、本数を調整してみてください。

中小企業のオウンドメディアの始め方

中小企業のオウンドメディアは、目的・読者・自社の強みを整理し、着手するテーマと記事の構成に落とし込むところから始めます。社内にある資料や、顧客からの質問も材料になります。

記事を用意したら、公開場所、更新・保守、問い合わせ先、計測を整えて運用を始めます。最初から完璧を目指さず、できるところから少しずつ始めてみてください。

目的と読者、届けたい自社の強みを整理する

まず、オウンドメディアで、どのような顧客の、どの困りごとを扱うのかを決めます。そのうえで、他社の商品・サービスとの違いや、USP(顧客に選ばれる理由になる、自社ならではの強み)を整理します。

あわせて、顧客が商品・サービスを思い浮かべるきっかけや、必要とする場面を具体的に考えてみてください。例えば、設備の更新時期、担当者の異動、繁忙期の前といった場面です。

最初から大がかりな資料を作る必要はありません。既存の商品・サービスの紹介ページや営業資料、簡単なドキュメントから整理を始めることが可能です。

検索意図と事業とのつながりからテーマを選ぶ

テーマの候補ごとに、次の4点を確認します。

  • 検索意図
  • 競合記事
  • 自社が提供できる情報
  • 事業との関連性

複数のキーワードを1記事で狙う場合は、上位記事の重複と、検索意図の近さを確認してから判断します。

候補は、検索キーワードからだけ探す必要はありません。営業資料、顧客からの質問、導入事例、社内研修資料も候補の材料になります。社内資料を使う場合は公開できる範囲を確認し、読者の疑問に合わせて組み直します。

着手する順番は、例えば次のように判断します。

記事候補の状況判断次の行動
商談でよく聞かれる質問で、回答資料もある初期候補にしやすい検索意図を確認し、読者向けの構成に整理する
サービスとの関連は強いが、専門家の確認が必要確認体制を整えてから着手する確認担当者・範囲・日程を確保する
書きやすいが、想定顧客やサービスとの関連が弱い初期の優先順位を下げる顧客の課題につながるテーマを先に検討する

なお、これは書き始める順番の例です。上位表示しやすい順ではない点は、ご了承ください。

私は、AIに検索意図と上位記事の共通コンテンツを整理してもらっています。複数キーワードを1記事で狙う場合には、上位記事の重複率もあわせて出してもらいます。その分析を自分で確認し、納得できたら構成案の作成に進みます。

読者の疑問に答える構成に、自社ならではの切り口を加える

上位記事の共通コンテンツを整理したうえで、自社だから提供できる情報を加えます。自社の強みや、社内に蓄積した情報・ノウハウを、読者の疑問に合う位置に入れていくイメージです。

ただし、独自性を出そうとして内容を増やしすぎないよう注意が必要です。検索意図と記事全体のバランスを確認します。

例えば私は、自社のUSPを生かせる内容や切り口を、構成案に加えるようにしています。一方で、現場経験に基づく記述であっても、記事の目的や全体のバランスに合わなければ削除することがあります。

公開・計測の準備を整え、小さく運用を始める

公開前に、次の5つを確認しておきます。

確認項目決めること
公開場所既存の会社サイトに記事を追加できるか
更新方法社内で更新できるか、制作会社への依頼が必要か
保守システム更新、不具合、バックアップなどの担当・依頼先
問い合わせ先サービス説明・問い合わせページが整っているか
計測検索流入、サービスページへの移動、問い合わせを確認できるか

オウンドメディアを既存の会社サイトで運用できるかを先に確認し、必要に応じて改修や新設を検討します。

計測では、サービスリンクのクリックと問い合わせ完了について必要なイベントを設定し、実際に操作して記録されるかを確認します。とくに見落としやすいのが、同じドメイン内にあるサービスページへのリンクです。GA4の拡張計測機能の「離脱クリック」は、現在のドメインから別のサイトへ移動するリンクのクリックで記録されます。そのため、同一ドメイン内の通常のリンクは自動では計測されず、別途設定が必要です。(参照:拡張計測機能イベント|アナリティクス ヘルプ)https://support.google.com/analytics/answer/9216061?hl=ja

また、問い合わせ完了を、フォームページへの移動や送信ボタンのクリックと混同しないようにします。

最初は少ない記事数で構いません。計測を確認できる状態で、公開を始めてみてください。

兼務・少人数でオウンドメディアを運用する体制の作り方

社内・外部・AIの役割を整理する図

中小企業のオウンドメディアを兼務や少人数で運用するときは、担当者の時間と編集経験に合わせて、社内・外部・AIの役割を決めます。社内で公開を承認する人と、実際に制作・編集する人は、分けて考えておくと進めやすくなります。

ここでは、私が専任の担当者1人でオウンドメディアを運営してきた例も紹介します。専任だからこそ担えた作業もありますので、兼務の方が同じ作業をすべて担う必要はありません。自社で担えそうな範囲を考えながら読んでいただけたらと思います。

運用責任者を決め、必要な作業時間を確保する

進行状況と優先順位を把握し、社内外を調整する運用責任者を決めます。責任者がすべての制作作業を担う必要はありません。

責任者の予定には、制作だけでなく、依頼・確認・編集・分析の時間も組み込みます。担当者が判断できる範囲と、経営者などの承認が必要な範囲も明確にしておきましょう。

社内で担う役割と外部に任せる仕事を分ける

社内の状況別に、外部に相談する範囲を整理すると、次のようになります。

社内の状況外部に相談する範囲社内で担うこと
編集できる担当者はいるが、制作時間が足りない執筆、取材、入稿など方針・優先順位の判断、必要な確認、公開承認
自社には詳しいが、構成・編集の経験が少ない企画、構成、執筆、編集、根拠の確認など自社情報の提供、自社に関する記述の確認、公開承認
担当者の時間がほとんど取れない対象テーマ・本数・進行方法の整理から相談最低限の情報提供・確認・承認に必要な時間の確保

戦略や企画の検討も、外部に相談することが可能です。社内だけで方針を完成させてから依頼する必要はありません。

外部に任せるときは、次の点も決めておくと進めやすくなります。

  • 記事の内容に応じて、商品・サービスの担当者など、記述を確認できる人を決める
  • 執筆を外注しても修正が多い場合は、情報共有や依頼内容を見直し、構成・編集まで任せるかを検討する
  • 根拠の確認に時間がかかる場合は、出典と該当箇所も納品してもらう

前述のとおり、私は現在、AIを活用して自分で記事を制作することが多くなりました。費用と工数の章で触れた「新規約20記事・リライト約10記事」は、新規執筆を全件外注していた時期の実績で、現在とは運営条件が異なります。今も、医師などの専門家の知識や、現場経験者の視点が必要な記事は、内容に応じて外注しています。このとき、執筆と監修は、実際にどこまで関与してもらったかに合わせて区別しています。

時間が限られるなら、構成の作成も外注の候補になるでしょう。ただし、構成には自社への理解が前提になると私は考えています。

AIを使う工程と人が確認する内容を決める

AIに任せる用途と、確認してもらう範囲を具体的に決めます。一方で、次の3点は人が判断します。

  • 自社の強みの伝え方
  • 記事の目的と内容が一致しているか
  • 公開してよい内容かどうか

また、複数のAIが同じ判断をしたからといって、根拠を確認できたことにはなりません。制度、数値、適用条件などは、根拠資料と照合して確認します。

私は、過度な断定表現、事実関係、内容の矛盾をAIで点検しています。別のAIで指摘の妥当性を再確認することもあります。そのうえで、内容や日本語に少しでも違和感があれば、自分で直接確認しています。

AIに原稿を修正させるときの指示と確認の方法は、AIリライトのプロンプト|元記事の主張を変えずに直す5ステップで解説しています。

依頼・確認・公開までの流れを整える

外部に依頼するときは、依頼する範囲に応じて、事前に共有する情報を分けます。

依頼する範囲依頼時に共有する情報
執筆を依頼する決定済みのテーマ・キーワード、読者、構成案、骨子、想定文字数など
企画・構成から依頼する目的、顧客の特徴、自社サービスの情報、既存資料、予算・時間など。テーマや構成は相談しながら決める

企画・構成から依頼する場合、構成案や骨子を依頼者が完成させておく必要はありません。未整理の情報は、既存資料をもとに相談しながら整理していけば大丈夫です。

依頼後は、段階ごとに確認する内容を決めておきます。

確認段階主に確認すること
構成段階読者の疑問、自社が伝えたい内容、必要な情報の過不足
原稿段階事実・数値・出典、自社サービスの説明、断定や矛盾
公開前修正の反映、表示、リンク、問い合わせ導線

私が執筆を依頼するときは、キーワード、テーマ、読者、構成案、必要最低限の骨子、想定文字数を渡しています。これは私が構成を担う場合の依頼方法で、すべての依頼者に必要な準備ではありません。情報共有はLPと簡単なドキュメントで行い、継続する中で認識を合わせています。また、納品後に私が編集することを事前に伝え、必要な削除や調整は自分で行っています。

外注する際は、納品時に求める品質と、その後の編集を誰が担うかも、セットで決めておきましょう。

オウンドメディアを問い合わせにつなげる改善の進め方

読者の移動経路と改善対象を示す図

オウンドメディアの記事を公開した後は、データを見ながら、次に何をするかを決めていきます。すでに成果が出ている記事を守ることと、これから育てる記事を選ぶことは、分けて考えるとよいでしょう。

データが少ない段階や、問い合わせがまだない段階で、それだけを理由に記事を失敗と判断するのは早いと思います。まずは、今どの段階でつまずいているのかを確認します。

集客・サービスへの送客・問い合わせを分けて確認する

Search ConsoleやBing Webmaster Toolsでは検索での表示やクリックの状況を、GA4ではサイト内の行動や成果を確認します。改善対象を決める前に、必要な計測が機能しているかも確認しておきます。

運用の状態ごとに、確認することと改善対象の考え方をまとめました。

運用の状態確認すること改善対象の考え方
検索からほとんど読まれていないインデックス登録、検索での表示、読者と内容の一致事業との関連が強く、具体的な問題を確認できる記事から着手
読まれているが送客が少ないサービスとの関連性、案内の有無・位置、サービスページへの移動状況検討につながるテーマで、導線に改善点がある記事を優先
送客はあるが問い合わせが少ない移動先の説明、フォーム、計測の不備サービスページや問い合わせまでの流れも確認
問い合わせ実績が蓄積している貢献記事の流入・成果の変化成果の維持・改善を優先

数値を比べるときは、イベントの発生回数とユーザー数を区別し、比較する期間、対象イベント、集計条件をそろえます。

成果につながっている記事の変化を重点的に見る

成果データが蓄積している場合は、問い合わせやサービスページへの移動につながっている記事を把握します。実績が少ない段階では、前の表の運用状態に応じて改善対象を選びます。

集計では、次の2組を区別して見ます。

  • 問い合わせ完了と、サービスページへの移動
  • 記事内リンクのクリック件数と、その記事を入口にした訪問中の問い合わせ件数

その記事を入口にした問い合わせ件数は、問い合わせ完了をキーイベントに設定していれば、GA4のランディングページ(セッションの最初のページ)ごとに確認できます。ただし、これは記事の貢献を見る一つの方法です。後日の再訪問などを含めた、記事の貢献全体を表すものではありません。(参照:[GA4] ランディング ページ レポート|アナリティクス ヘルプ)https://support.google.com/analytics/answer/12931766?hl=ja

私は、キーイベントの発生件数を重視し、普段から件数の多い記事の変化を気にかけています。

注視すべき記事は、サイトや企業ごとに異なります。運営しながら、どの記事の状況を把握しておくべきかを、早めに決めておくとよいと思います。

通常時と急落時で、改善の優先順位を分ける

成果データが蓄積している場合は、通常時の改善の優先順位を、CV(問い合わせなどの成果)への貢献度を踏まえて決めます。実績が少ない段階では、前の表を使い、検索での表示、事業との関連性、サービスへの導線などから判断します。

一方、検索順位やPVが急落した場合は、状況の確認を優先します。影響範囲や原因を調べたうえで、必要な対応を判断します。急落したからといって、慌てて全文をリライトする必要はありません。

成果データが蓄積しているメディアを運営してきた私の場合も、通常はCVへの貢献度を重視し、急落時はその対応を優先する、という判断軸で動いています。

課題に合わせて内容と導線を改善し、結果を確認する

改善する内容は、見つかった課題によって変わります。

  • 検索意図とのずれがある:情報の過不足や説明の順序を見直す
  • サービスへの案内に課題がある:案内の内容、位置、移動先を改善する

変更した内容と実施日は記録し、その後の変化を確認します。新規記事の制作だけでなく、成果につながる既存記事の改善にも時間を配分しておくことが大切です。

確認する指標の決め方は、オウンドメディアのKPI設定方法とは?目的・運用状態別の指標例とKPIツリーで詳しく解説しています。次に何を直すかを決めるところから、改善を回してみてください。

まとめ|自社に合った体制でオウンドメディアを育てよう

中小企業のオウンドメディアは、顧客の疑問に答えながら、自社の強みやサービスを知ってもらうための場所です。

時間、予算、編集経験に合わせて、自社で担う工程と外部に任せる工程を決めます。制作本数だけを目標にせず、確認・編集・改善まで続けられる範囲から始めることが大切です。

編集実務室では、次のようなご相談に対応しています。

読者の困りごと相談できる支援内容
何から記事化すればよいか決められないテーマ・キーワードの優先順位整理
自社の強みを構成に反映できない読者とサービスの関係を踏まえた構成案作成
原稿の確認・編集まで手が回らない納品原稿の編集、確認工程の整理
どの記事を改善すべきか分からないデータに基づく改善候補と優先順位の整理

自社に合った体制で、無理なく続けられるオウンドメディアを育てていきましょう。

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この記事を書いた人

企業のオウンドメディアで、企画・構成・執筆・編集から、SEO改善、アクセス分析まで担当しています。HR・キャリア・介護領域を中心に、外部ライターの進行・品質管理にも携わっています。

「編集実務室」では、日々の運用で試したことや考えたことをもとに、記事制作、SEO・AI検索への対応、生成AIの活用について発信しています。ひとりでメディアを運営する方にも役立つよう、実務で使える考え方や進め方をまとめています。

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