KGI(ケージーアイ)とは、Key Goal Indicatorの略で、日本語では「重要目標達成指標」と訳される言葉です。事業や業務で最終的に目指す成果が、どこまで達成できたかを測る指標を指します。例えば営業部門であれば、「新規受注金額」が指標にあたり、「計画対象月に400万円」が目標にあたります。
ただ、実際にオウンドメディアの目標設定を任されると、
「問い合わせ数はKGIなのか、それともKPIなのか」
「売上、問い合わせ、PVのどれを最終成果にすればいいのか」
「目標値と期限は、何を根拠に決めればいいのか」
といった迷いのある担当者の方も多いのではないでしょうか。問い合わせ数がKGIになるかKPIになるかは、何を最終成果とし、どこまでを自分たちの担当範囲とするかによって変わります。
この記事では、KGIの意味とKPIとの違い、営業・採用・顧客対応にも共通する具体例と考え方を解説し、詳しい設定の手順はオウンドメディアの仮例で紹介します。後半では、指標・目標値・期間・集計条件・確認する人をまとめる「KGI設定票」の記入見本と空欄版もお伝えしますので、上司や関係部署と確認する際の下書きとして使っていただけたらと思います。
なお、記事内に登場する会社・数値・社内の取り決めは、すべて説明用の架空の例です。業界平均や推奨値、実際の支援成果ではない点は、ご了承ください。
KGIとは?最終目標の達成度を測る指標
KGIという言葉は知っていても、KPIとの違いまで説明しようとすると、意外と言葉に詰まるものです。
IPA(情報処理推進機構)のITパスポート試験シラバスには、目標設定や評価のための用語として、KPI(重要業績評価指標)などとあわせて「KGI(重要目標達成指標)」が挙げられています。
(参照:ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5 p.15|独立行政法人情報処理推進機構)https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/omgdg50000005kn1-att/syllabus_ip_ver6_5.pdf
観光庁のスノーリゾート地域向けの手引書では、KGIを、目指すビジョンを具体的な数値目標に置き換えたもので、最終的に達成すべき成果を示すものと説明しています。例としては、売上高や市場シェアが挙げられています。
(参照:スノーリゾート地域の経済波及効果分析手引書 Ver.1 p.3|観光庁)https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001884365.pdf
この記事では、こうした資料に共通する考え方をもとに、KGIを「評価の対象とする事業や業務の、最終的な成果の達成度を測る指標」として扱います。記事を何本公開したか、打ち合わせを何回したかといった活動の量は、KGIとは分けて考えます。
指標と目標値を分けて考える
KGIを決めるときは、「何を測るか(指標)」「どの水準を目指すか(目標値)」「どの期間で評価するか(期間)」の3つを分けておくと、話が混ざりにくくなります。
IPAの要件定義に関する解説資料でも、目的の達成度合いを測る「ものさし(測定尺度)」と、「いつまでに」「どの程度」達成するかを示す目標とを分けて整理しています。
(参照:第二部 ビジネス要求定義(BR)における問題と解決の勘どころ p.15|独立行政法人情報処理推進機構)https://www.ipa.go.jp/publish/qv6pgp000000a6t8-att/000085750.pdf
ここから先は、ある架空のBtoBサービス会社のオウンドメディアを例に解説します。この会社のメディアの目的は、サービスの相談を獲得することです。メディア担当は、記事から受け付けた相談を整理して営業へ引き継ぐところまでを担い、その先の商談や受注は営業と一緒に確認しています。
この例で3つの要素を分けると、次のようになります。
- 何を測るか(指標):新規有効問い合わせ件数(記事専用フォーム)
- どの水準を目指すか(目標値):30件以上(案。まだ合意していません)
- どの期間で評価するか(期間):計画対象四半期の3か月

実務では、目標値まで含めて「KGI」と呼ぶことも少なくないと思います。ただ、この記事では「何を測るか」と「いくつを目指すか」を分けて記録します。指標は決まっていても、目標値はまだ決まっていない、という場面は意外と多いものです。分けて書いておけば、合意できている部分と保留している部分を、関係者と確認しやすくなります。
また、評価の期間が1年か3か月かで、KGIかどうかが決まるわけではありません。期間は、事業計画の区切りと、取り組みを始めてから評価したい成果が出るまでの時間を確かめて決めます。
「有効」と判断する条件や、30件という案をどう扱うかについては、KGIの設定方法の章で詳しく解説します。まずはご自身の業務で、指標・目標値・期間の3つを分けて書き出してみてください。
KGIを設定すると何を判断できるか
KGIを設定すると、主に3つのことを判断しやすくなります。
1つ目は、成果の認識を上司や他部門とそろえられることです。例えば「問い合わせを増やす」とだけ決めていると、営業は商談につながる相談を、メディア担当はフォームの送信件数を思い浮かべている、ということが起こり得ます。測る指標を決めておけば、同じ数字を見て話すことが可能です。
2つ目は、実績と目標の差を確認できることです。期間の途中でも、目標に対してどのくらい進んでいるかを把握できます。
3つ目は、KPIを選ぶ起点になることです。最終的な成果が決まると、その手前で何を確認すればいいかを考えやすくなります。
ただ、KGIの増減だけでは、なぜ増えたのか、どの施策が効いたのかまでは分かりません。原因を調べるには、途中の指標や現場の記録をあわせて見る必要があります。また、KGIを設定すれば担当者の意欲や生産性が自然に上がる、評価が公平になる、というものでもありません。
KGIは、成果について関係者と話すための共通のものさしとして考えていただけたらと思います。
KGIとKPIの違い
KGIとKPIは名前が似ているため、どちらに何を置けばいいのか迷いやすいところです。
KPIは、Key Performance Indicatorの略で、「重要業績評価指標」と訳されます。KGIが最終的な成果の達成度を評価する指標であるのに対して、KPIは、そこへ向かう途中の重要な成果・過程・状態のうち、重点的に確認する指標です。
KGIは最終成果、KPIは途中の進み具合を確認する
通し例で、KGIとKPIを比べると次のようになります。
| 比較すること | KGI | KPI |
|---|---|---|
| 役割 | 評価対象の最終成果の達成度を測る | 達成に向かう途中の重要な成果・過程・状態を確認する |
| 確認する問い | 何を最終成果とし、どこまで達成したか | 成果へ向かう途中で、重点的に何を確かめるか |
| 通し例 | 新規有効問い合わせ件数。計画対象四半期30件以上の案は未合意 | 候補は「記事からサービス説明ページへの遷移件数」「記事専用フォームの送信件数」 |
※通し例は説明用の架空設定です。同じ指標でも目的と評価範囲で役割が変わり、期間の長さでKGI・KPIを決めるわけではありません。
KPIの候補に挙げた「記事専用フォームの送信件数」は、KGIの「新規有効問い合わせ件数」と似ていますが、同じものではありません。フォームの送信には、営業の売り込みやスパム、対象外の相談なども含まれるため、送信のすべてが有効な問い合わせになるわけではないからです。
IPAの資料では、目的や目標どおりに成果があがっているかを見る指標としてKGIを、行動や活動が計画どおりに行われているかを見る指標としてKPIを使い分ける例が示されています(IPAの要件定義の解説資料 p.16)。この記事では、KPIの対象を活動だけに限らず、途中の成果や状態まで含めて扱います。
また、ISACA(情報システムの監査やガバナンスに関わる国際団体)の用語集では、ITガバナンスの文脈で、KGIを目標が達成されたかを示す指標、KPIを目標が達成されそうかを示す指標として説明しています。あわせて、途中の指標が良くなれば結果も良くなるという関係は、あくまで想定されたものだとしています。KPIを達成すれば、KGIの達成も保証されるわけではありません。
(参照:Interactive Glossary(Key goal indicator/Outcome measure/Performance driver)|ISACA)https://www.isaca.org/resources/glossary
KPIの候補は、挙げようと思えばいくらでも出てきます。ただ、すべてを管理対象にすると、確認するだけで手一杯になってしまいます。実際の数字と、いま抱えている課題を見て、重点的に確認する項目を選ぶことが大切です。
まずは、ご自身のKGIの手前にある候補を2〜3個書き出してみてください。
同じ指標でも目的と担当範囲で役割が変わる
同じ「新規有効問い合わせ件数」でも、何を目的とし、どこまでを評価するかによって、KGIにもKPIにもなります。
例えば、事業全体の成果を評価する場合は、最終成果を「新規受注金額」に置くことが考えられます。このとき、新規有効問い合わせ件数は、受注へ向かう途中で確認するKPIの候補です。
一方、営業へ相談を引き継ぐところまでを担当範囲として評価する場合は、同じ新規有効問い合わせ件数が、その範囲のKGIの候補になります。

IPAの資料でも、経営レベルの目的・目標に貢献するサブゴールとして、業務レベルの目的・目標を設定する考え方が示されています(IPAの要件定義の解説資料 p.14)。担当範囲ごとにKGIを置く考え方は、これを部門の目標設定に応用したものです。
ただし、担当範囲のKGIを選んだ場合も、上位の成果とのつながりは残しておきます。問い合わせ件数だけを見ていると、受注につながらない相談が増えていても気づきにくいからです。
また、KGIを「自分だけで完全に動かせる数値」に限る必要はありません。問い合わせの数は、読者や顧客の判断にも左右されます。自分たちの取り組みが大きく関わり、担当範囲の成果として説明できるかどうかで考えるとよいでしょう。
どちらの範囲でKGIを置くかの考え方は、次の章で解説します。
なお、KGI・KPIとあわせてよく見かける言葉に、KSFとOKRがあります。KSF(Key Success Factor:重要成功要因)は成果を生むために重視する要因のことで、観光庁の手引書では、KGIの達成に必要な成功要因や戦略として説明されています(観光庁のスノーリゾート向け手引書 p.3)。OKR(Objectives and Key Results)は、目標と、その達成を測る主要な結果を組にして運用する目標管理の方法です。KGIの設定を進めるうえでは、名前を頭の片隅に置いておく程度で問題ありません。
(参照:Set goals with OKRs|Google re:Work)https://rework.withgoogle.com/intl/en/guides/set-goals-with-okrs
KGIの具体例|何を最終成果に置くか
KGIの意味が分かっても、自分の業務で何を選ぶかになると手が止まる方も多いと思います。
KGIは、業務の名前から機械的に決まるものではありません。同じ営業でも、目的と評価する範囲によって選ぶ指標は変わります。ここでは一般的な業務の例を確認したうえで、オウンドメディアで迷いやすい売上と問い合わせの選び方を解説します。
営業・採用・顧客対応のKGI例
業務ごとに、何を成果として測るかを並べると、次のようになります。
- 営業:新規案件の契約獲得を、「新規受注金額」で測る
- 採用:必要な人員の確保を、「入社人数」で測る
- 顧客対応:対応への満足度の改善を、「問い合わせ対応後アンケートの満足回答割合」で測る

それぞれの業務には、成果と混同しやすい出来事があります。
営業の場合、受注した金額と、売上として計上された金額は、時点が異なることがあります。契約の獲得を評価したいなら、売上計上額とは分けて、新規受注金額を測ることになります。
採用の場合、内定を出した人数と、実際に入社した人数は一致するとは限りません。必要な人員を確保できたかを測るなら、入社人数で数えるほうが目的に合います。
顧客対応の場合、アンケートで分かるのは、回答してくれた人の評価です。回答していない顧客を含めた、全顧客の評価とは区別して扱います。満足回答割合は、同じ対象期間・同じ設問の有効回答数を分母、あらかじめ決めた「満足」の選択肢への回答数を分子として計算します。無回答や重複回答をどう扱うかも事前に決めておき、有効回答が0件の期間は割合を算出しません。
目標の仮例と、先に決めておきたい集計条件をまとめると、次のとおりです。
| 業務と目的 | 営業:新規案件の契約獲得 |
|---|---|
| KGIにする指標 | 新規受注金額 |
| 目標の仮例 | 計画対象月400万円以上 |
| 先に決める集計条件 | 売上計上額と区別。契約確定日、税区分、更新の除外等を定義する |
| 業務と目的 | 採用:必要人員の確保 |
|---|---|
| KGIにする指標 | 入社人数 |
| 目標の仮例 | 対象年度に必要職種で5人 |
| 先に決める集計条件 | 内定人数と区別。対象職種・期間と入社として数える条件を定義する |
| 業務と目的 | 顧客対応:対応への満足度改善 |
|---|---|
| KGIにする指標 | 問い合わせ対応後アンケートの満足回答割合 |
| 目標の仮例 | 計画対象四半期80%以上 |
| 先に決める集計条件 | 同じ対象期間・設問の有効回答数が分母、事前に決めた満足の選択肢への回答数が分子 |
※全例が説明用で、業界目安・推奨目標ではありません。顧客対応の例は回答者の評価を測るもので、全顧客の評価とは区別します。無回答・重複の扱いを決め、分母が0の場合は算出しません。
表の数値をそのまま目標に使うのではなく、自社の目的と条件にあてはめて決めることが大切です。ご自身の業務で、成果と混同しやすい出来事が何か、一度確かめてみてください。
オウンドメディアでは売上と問い合わせをどう選ぶか
オウンドメディアのKGIで迷いやすいのが、売上(受注)を置くか、問い合わせを置くかです。判断するときは、次の4つを切り分けて考えると整理しやすくなります。
- 事業として、最終的に何を増やしたいか
- 自分たちが担っている成果は何か
- 営業などと共同で担っている成果は何か
- どのデータを取得できるか
例えば、売上や受注まで営業と共同で責任を持ち、問い合わせから受注までを同じ案件として追跡できるなら、売上や受注もKGIの候補になります。
一方、相談を営業へ引き継ぐところまでが担当範囲なら、有効問い合わせ件数を担当範囲のKGIの候補にすることが考えられます。その場合は、全社の売上とどうつながるか、どの条件を満たした相談を引き継ぐか、引き継いだ後の結果をどう確認するかを、上司や営業と合意しておきます。
PVをどう扱えばいいのか、気になる方もいらっしゃると思います。PVが増えたことだけでは、問い合わせの獲得という目的を達成できたかは判定できません。認知を目的とするメディアであっても、PVはページが表示された回数で、認知率そのものとは異なります。ただ、目的と評価する範囲によっては、PVを最終成果の指標に置く場面がまったくないとはいえません。
また、受注や売上のデータがまだ取れない場合もあると思います。その場合は、測りやすい数値へ黙って置き換えず、「未計測」なのか「代替指標で見ている」のかを分けて記録し、いつから取得するかの予定も残しておきましょう。目的や運用の状態に応じたKPIの選び方については、オウンドメディアの目的と運用状態に合うKPIの選び方で解説していますので、あわせて参考にしていただけたらと思います。
KGIの設定方法|仮例で進める5ステップ
KGIの選び方が見えてきたら、次は関係者と合意できる形に落とし込む作業です。
ここでは、KGIを設定する手順を5つのステップで解説します。この5ステップは公的な規格などではなく、本記事で提案する進め方です。私としては、この順番で決めていくと、関係者との確認を進めやすいと考えています。
各ステップでは、まず業務に共通する考え方を示し、そのあとにオウンドメディアの仮例を紹介します。営業の方なら新規受注金額、採用の方なら入社人数に置き換え、集計の条件や取得先、確認する相手も、ご自身の業務に合わせて読み替えてみてください。
通し例は、「計測の方法と前期の実績は確認できたものの、目標値を合意するには情報が足りない」という場面です。30件という案をすぐに採用せず、なぜ保留するのか、誰が何をいつまでに確認するのかまでを書き残す見本として紹介します。

1. 目的と評価する範囲を決める
最初に、事業として増やしたい成果と自分の担当範囲を一文で書き、誰と確認するかを決めます。
通し例では、目的と評価範囲を次の一文にまとめました。
事業では新規受注につなげたい。その中で、メディア担当が営業へ渡せる有効な相談を増やす。
この一文をもとに、上司・営業と、次の3点を合意しておきます。
- どこまでを担当範囲として評価するか
- どの条件を満たした相談を営業へ引き継ぐか
- 引き継いだ後の商談や受注の結果を、どう共有してもらうか
売上と問い合わせのどちらを選ぶかは、前の章で解説したとおりです。ここでは、その結果を設定票の「目的・評価範囲」の欄に書き込んでおきましょう。
2. 成果を測る指標と集計条件を決める
次に、KGIにする指標と、その数え方を決めます。決めておきたいのは、指標名、数える対象、単位、計上する日、除外や重複の扱い、データを取得できるかどうかの6つです。
集計条件を細かく決めるのは、担当者が変わっても同じ件数を出せるようにするためです。条件があいまいなままだと、同じ期間でも、数える人によって件数が変わってしまいます。
通し例では、次のように決めています。
- 指標名と単位:新規有効問い合わせ件数(記事専用フォーム)。単位は「件」で、人数やセッション数、送信ボタンが押された回数とは異なる
- 数える対象:初回の受信日が対象期間中にあり、その初回の受信が記事専用フォームだった相談。他のフォームからの問い合わせは途中から混ぜない
- 有効とする条件:初回受信日の時点で既存の契約中ではない企業からの相談のうち、対象サービスの相談であること、対象企業の条件、連絡可能な連絡先を確認できたもの
- 除外するもの:営業の売り込み、採用に関する連絡、スパム、対象外の相談
- 重複の扱い:同じ企業からの同じ相談には同じ案件IDを付け、初回受信日に一度だけ数える。再送や継続の連絡は、月や四半期をまたいでも新規には数えない。別の相談は別の案件IDにする
判定のタイミングと修正の扱いも決めておきます。有効かどうかを判定するまでは暫定値として扱い、月末に受信して翌月に有効と判定した相談も、初回受信の月に戻して数えます。判定後の修正や、初回受信日時点の情報の訂正には履歴を残し、後日の成約の結果だけを理由に過去の件数を取り消すことはしません。
前期の24件も、この定義で数えた件数です。比べる期間どうしで数え方がそろっていないと、増えたのか減ったのかを判断できなくなります。
決めた内容は、設定票の「KGIにする指標」「集計条件・単位」の欄へ記入します。取得できない情報がある場合は、空欄のままにせず「未計測」と書いておきましょう。ここで紹介した条件はあくまでこの仮例の定義ですので、ご自身の業務では、何を含めて何を除くかから書き出してみてください。
3. 現状と必要な成果から目標値と期限を決める
目標値は、同じ定義で数えた現状値と、事業として必要な水準、実行できる体制の両方から確かめて決めます。
通し例では、前期(直前四半期の3か月)の実績が、同じ定義で24件でした。目標の案は、その翌四半期にあたる計画対象四半期に30件以上です。
計算すると、30−24=6件、6÷24=25%の上積みになります。ただ、25%増と計算できることは、30件という案が妥当であることや、実現できることの証明にはなりません。

いま確認できていることと、まだ確認できていないことを分けると、次のようになります。
- 確認できたこと:同じ定義で数えた前期の24件、計測と有効判定の体制
- まだ確認できていないこと:営業計画から見て必要な相談数とその理由、前期とは異なる季節の条件、6件を上積みするための施策と必要な工数、営業が受け入れられる余力
季節の条件が違う四半期を、前期との比較だけで評価するのは少々乱暴です。そこで通し例では、30件以上の案を正式な目標として採用せず、保留としました。
保留にしたままでは話が進まないため、誰が何を確認するかも決めておきます。
- 営業責任者:必要な相談数と営業計画上の理由、受け入れられる余力
- メディア担当:流入・導線・有効条件の実績と、施策・必要な工数
- 両者:季節の条件
そのうえで、計画対象四半期の開始後5営業日以内に、もう一度協議します。必要な相談数と、実行・受け入れの体制が30件の案と合っていれば、正式な目標として採用します。足りない点があれば、数値だけを下げるのではなく、目標の水準・期間・施策や体制のどこを調整するかを話し合います。それまでは、30件を合意済みの目標として評価・報告しません。
なお、「開始後5営業日以内」はこの仮例での取り決めで、一般的に推奨される期限ではありません。ご自身の設定票には、実際の年月日を書いてください。
設定票では、「目標期間・目標値・根拠」の欄に目標の案と保留の理由を、「合意状況・保留事項・見直し」の欄に確認する人・期限・次の判断を残します。
設定した目標を点検する観点としては、SMARTも参考になります。SMARTの展開にはいくつかの言い方がありますが、この記事では、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(実現可能)、Relevant(目的と関連している)、Time-bound(期限がある)の5つの観点として扱います。米国CDC(疾病対策センター)の研修づくりのガイドでは、学習目標を書くときの観点としてこの5つが説明されており、ITパスポート試験のシラバスでも、目標設定のフレームワークの例としてSMARTが挙げられています。指標の名前だけでなく、設定した目標そのものが5つの観点を満たしているかを確かめるとよいでしょう。
(参照:Design Training: Learning Objectives|CDC)https://www.cdc.gov/training-development/php/about/design-training-learning-objectives.html
また、初めて取り組む業務で過去の実績がない場合は、実績を推測で埋めず、まず計測する期間と、暫定の目標を見直す日を決めておくことが大切です。
目標値が決めきれないときは、無理に数字を置くより、保留の理由と次の確認を書き残すところから始めていただけたらと思います。
4. データの取得先と確認する人を決める
KGIは、決めただけでは運用できません。どこからデータを取り、誰が記録・判定し、誰がいつ結果を確認するかまで決めておく必要があります。
通し例の仮の運用案は、次のとおりです。
- 取得元:フォームの受信記録と、問い合わせ管理表
- 記録:メディア担当が整理する
- 有効の判定:営業担当が確認する
- 結果の確認:両方の責任者が、月次で途中の実績を、四半期の終了後に最終の実績を確認する
ここで区別しておきたいのが、評価する期間と、確認する頻度です。通し例の評価期間は四半期ですが、確認は毎月行います。月次の値は、四半期の対象となる案件IDを、初回受信の月ごとに分けて数えたものです。同じ案件を翌月にも重ねて足すことはしません。また、四半期で30件という案を、そのまま「毎月10件が必達」と置き換えることもしません。
まだ計測できていない情報がある場合は、取得を始める日と、再確認する日も書いておきます。担当者が決まらないまま運用を始めることは避けましょう。
もう一つ、測定できる範囲も確かめておきます。通し例では、記事専用フォーム以外からの問い合わせや、記事を読んだ後に別の経路で連絡してきた相談は、この集計に含まれません。そのため、この件数は、メディアの貢献のすべてや、メディアによって純粋に増えた分を表すものではありません。数字を測れることと、施策が成果を生んだと証明できることは、分けて考える必要があります。
引き継ぎ後に商談になったか、見送りになった理由は何かも、同じ案件の単位で追います。その月の問い合わせ件数と、その月の受注件数をそのまま割り算して率にすると、対象が異なる数字どうしを比べることになるため注意が必要です。
ここまでの内容は、設定票の「取得先・担当・確認時点」の欄にまとめておきましょう。
5. KPIとのつながりを確認し、設定票にまとめる
最後に、KGIの手前で必要になる状態を整理し、重点的に確認するKPIの候補を選びます。
例えば通し例で有効問い合わせが増えない場合は、次のような内訳を確かめることが考えられます。
- 記事から、フォームのあるページまで読者が到達しているか
- フォームまで来た読者が、送信しているか
- 送信された相談のうち、対象外として除外されたものがどれくらいあるか
どこで減っているかが分かれば、次に調べる箇所を決めることが可能です。ただ、ここで見えてきた施策と成果の関係は、改善のための仮説として扱います。
KPIは、最初からすべてを毎週管理する必要はありません。また、条件や期間の違う数値を、無理に掛け算でつなげることも避けましょう。KGIからKPIを分解したり、目標値から逆算したりする方法については、KGIからKPIツリーへ分解する手順で詳しく解説しています。
ここまで決めた内容を、1枚の設定票にまとめます。

以下は、通し例の合意前の記入見本です。
| 項目 | 記入見本 |
|---|---|
| 1 目的・評価範囲 | 新規受注につながる相談を増やす。 今回の担当範囲は、記事からの有効問い合わせを営業へ引き継ぐまで |
| 2 KGIにする指標 | 新規有効問い合わせ件数(記事専用フォーム) |
| 3 集計条件・単位 | 初回受信が記事専用フォームで、初回受信日が対象期間中の相談。 対象企業・対象サービス・連絡可能な連絡先を確認。 初回受信日時点の既存契約顧客、売り込み・採用・スパム等を除外。 同一企業の同一相談は同じ案件IDで初回受信日に一度だけ計上し、期をまたぐ再送は加算しない。 別の相談は別ID。 後日の成約だけでは過去の件数を減らさない。 単位は件 |
| 4 基準期間と現状値 | 直前四半期の3か月。 初回受信日、再送の除外、受信時点の契約状態を含む上記と同じ条件で24件 |
| 5 目標期間・目標値・根拠 | 翌四半期である計画対象四半期に30件以上の案を保留。 前期24件と計測体制は確認済み。 必要な相談数と営業計画上の理由、季節性、上積み6件の施策・工数、営業の受入余力は未確認。 25%増という計算だけでは採用しない |
| 6 取得先・担当・確認時点 | フォーム受信記録と問い合わせ管理表。 メディア担当が整理し、営業担当が有効を確認。 両責任者が月次と四半期終了後に確認。 案件IDを初回受信月で分け、重ねて加算しない。 判定前は暫定、判定後は初回受信月へ戻す。 誤りの訂正は履歴を残す |
| 7 上位成果への接続と品質確認 | 同じ案件を商談・受注まで確認。 有効条件を緩めず、営業の対応負荷と見送り理由を確認。 専用フォーム外の問い合わせや純増効果は測れない |
| 8 合意状況・保留事項・見直し | 30件案は未合意。 営業責任者が必要相談数・理由・受入余力を、メディア担当が流入・導線・有効条件の実績と施策・工数を、両者が季節条件を確認。 計画開始後5営業日以内に再協議。 整合すれば正式採用、不足なら目標水準・期間・施策や体制を調整。 目的・担当範囲・定義・前提が変われば、旧条件・理由・合意日を記録 |
※見本全体が説明用の架空設定です。24件の実績、30件の案、確認済み・未確認の区分、担当者間の取り決めは、実際の事例ではありません。有効の条件と例外の詳細は「2. 成果を測る指標と集計条件を決める」をご覧ください。
ご自身の業務で使う場合は、次の空欄版をコピーして記入してみてください。営業や採用の方は、指標だけでなく、数える対象・判定する日・取得元・確認する相手も、ご自身の業務に合わせて置き換えます。問い合わせの条件を、そのまま他の業務へ当てはめる必要はありません。
| 項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 1 目的・評価範囲 | 何を実現したいか。どの範囲を評価し、誰へ引き継ぐか。記入: |
| 2 KGIにする指標 | 何を測るか。ここは指標名だけを書く。記入: |
| 3 集計条件・単位 | 何を含め、何を除くか。いつの状態で判定し、いつ一度だけ計上するか。単位は何か。記入: |
| 4 基準期間と現状値 | どの期間に、同じ定義でいくつだったか。未計測なら未計測と書く。記入: |
| 5 目標期間・目標値・根拠 | いつまでに、いくつを目指すか。必要な理由と実行体制は何か。採用・保留の理由は何か。記入: |
| 6 取得先・担当・確認時点 | どこから取り、誰が記録・判定・確認し、いつ見るか。未計測なら取得開始日・再確認日も書く。記入: |
| 7 上位成果への接続と品質確認 | 上位の成果をどう確認するか。悪化させたくない品質・負荷、測れていない範囲は何か。記入: |
| 8 合意状況・保留事項・見直し | 何が合意済みで、何が保留か。誰がいつまでに何を確認し、どう判断するか。何が変われば見直すか。記入: |
設定票ができたら、上司や営業と内容を確認します。合意できなかった条件があれば、その内容と理由も記録しておきましょう。KGIが確定してからKPIの詳しい設計に進むと、話が行き来しにくくなると思います。
設定したKGIを運用するときの注意点
KGIを決めて運用を始めると、今度は数字の上下が気になってくるものです。
ここからは、目標値が正式に合意できた後を想定して、運用中に気をつけたい点を解説します。
数を達成しても目的から外れていないか確かめる
KGIの数字が目標に届いていても、本来の目的から外れていることがあります。
例えば通し例で、件数を伸ばすために「有効」の条件を緩めてしまうと、件数は増えても、営業へ渡す相談の質が下がるかもしれません。その結果、営業の対応の手間ばかりが増えて受注にはつながらない、ということも起こり得ます。
こうした事態を防ぐために、定義は自分たちの都合で変えず、引き継ぎ後に商談になった状況、見送りになった理由、営業の対応負荷もあわせて確認します。
ただし、確認したい項目をすべてKGIにする必要はありません。最終成果として測る指標は絞り込み、悪化させたくない品質や負荷は、別の確認項目として見ておくとよいでしょう。
何を確認するかは、設定票の「上位成果への接続と品質確認」の欄に書いておくとよいでしょう。
未達の理由を分けて調べ、必要な前提を見直す
目標に届かなかったときは、次の順で理由を切り分けます。
- 定義の誤り、記録の漏れ、暫定値のままの案件がないか
- 対象となる相談、流入や導線、引き継ぎに問題がないか
- 施策から結果が出るまでの時間や、外部の条件が影響していないか
- 施策・体制・目標のどれを見直すべきか
未達だったことだけを理由に目標を下げたり、担当者の能力が足りないと決めつけたりするのは避けたいところです。KGIとKPIの違いの章で触れたとおり、途中の指標と最終成果の関係は想定にもとづくものですので、数字の増減だけで原因を断定することはできません。
また、事業の目的や担当範囲、サービスの内容、集計の方法といった前提が変わった場合は、KGIや目標の見直しを関係者と協議します。その際は、変更前の定義と目標、変更した理由、合意した日を記録し、比較できない期間は「比較不可」と明記しておきます。未達を目立たなくするために、過去にさかのぼって定義を変えることは避けましょう。
確認した日、判断した内容、見直しの条件は、設定票の「合意状況・保留事項・見直し」の欄に記録しておきましょう。
まとめ|何を成果とするかを決めてから数値目標を置く
KGIは、評価の対象とする事業や業務について、最終的な成果の達成度を測る指標です。KPIは、そこへ向かう途中で重点的に確認する指標で、同じ指標でも、目的と担当範囲によって役割が変わります。
KGIを設定するときは、次の順で決めていくと整理しやすくなります。
- 担当範囲の最終成果を決める
- 指標と集計条件を決める
- 目標値と期間を決める
- データの取得先と確認する人を決める
- KPIとのつながりを確認する
目標値がすぐに決まらない場合でも、保留の理由と次の確認を書き残しておけば、関係者と話を進めることが可能です。
まずは、設定票の「目的・評価範囲」と「KGIにする指標」の2つを埋めて、上司や関係部署と確認するところから始めていただけたらと思います。
参考資料
- (参照:ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5|独立行政法人情報処理推進機構)https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/omgdg50000005kn1-att/syllabus_ip_ver6_5.pdf
- (参照:第二部 ビジネス要求定義(BR)における問題と解決の勘どころ|独立行政法人情報処理推進機構)https://www.ipa.go.jp/publish/qv6pgp000000a6t8-att/000085750.pdf
- (参照:スノーリゾート地域の経済波及効果分析手引書 Ver.1|観光庁)https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001884365.pdf
- (参照:Interactive Glossary|ISACA)https://www.isaca.org/resources/glossary
- (参照:Set goals with OKRs|Google re:Work)https://rework.withgoogle.com/intl/en/guides/set-goals-with-okrs
- (参照:Design Training: Learning Objectives|CDC)https://www.cdc.gov/training-development/php/about/design-training-learning-objectives.html
いずれも2026年10月4日に内容を確認しています。
