BtoBのカスタマージャーニーとは?マップの作り方と具体例を解説

BtoBのカスタマージャーニーの作り方

「自社の顧客が、どんな情報を必要としているのか分からない」
「記事や資料を整えたいけれど、何から手をつければよいのか迷う」
「カスタマージャーニーマップを作ってみたものの、施策にどうつなげればよいのか分からない」

といった迷いのあるWeb・マーケティング担当者の方も多いのではないでしょうか。

BtoBのカスタマージャーニーを書き出してみると、顧客がどんな行動をとり、何を判断材料にしているのかが見えてきます。そうすると、必要な接点やコンテンツ、営業・サポートの対応を考えやすくなるでしょう。BtoBの場合は、窓口になる担当者だけでなく、上司や決裁者、実際に使う人などの関係者と、社内での判断もあわせて考えることがポイントです。

本記事では、BtoBのカスタマージャーニーの基本とBtoCとの違い、マップの具体例と作り方を解説します。後半では、作ったマップを記事テーマの選び方や既存記事の見直し、記事の内容と次の導線にどう生かすかもお伝えできたらと思います。

なお、紹介する例は考え方の一つです。商材や顧客企業、マップを作る目的に合わせて、項目や段階はご変更ください。

目次

BtoBのカスタマージャーニーとは

BtoBのカスタマージャーニーとは、法人顧客が課題を認識し、情報収集、選択・導入、利用などを経験する一連の過程です。カスタマージャーニーマップは、その過程を顧客側の担当者や利用者などの視点から整理し、行動・考えや感情・接点を可視化したものです。

例えば、社内の申請業務を改善したい担当者が、改善の方法を調べ、候補を比べ、上司に相談する。この一連の流れがカスタマージャーニーで、それを表や図に書き出したものがカスタマージャーニーマップです。

Nielsen Norman Groupは、ジャーニーマップを、人が目標を達成するまでに経験する過程を可視化したもの、と説明しています。(参照:Journey Mapping 101|Nielsen Norman Group)

マップで扱う範囲は、作る目的によって決めます。認知から購入までを扱うこともあれば、導入後の利用まで含めることもあります。

ただ、必ずしも全期間を一枚のマップに詰め込む必要はありません。また、資料によって用語の使い方には少し違いがあります。本記事では、顧客が経験する過程を「カスタマージャーニー」、それを書き出したものを「カスタマージャーニーマップ(マップ)」と呼び分けます。

カスタマージャーニーとあわせてよく使われる言葉に、ペルソナがあります。ペルソナは「誰の視点で見るか」を表す顧客像で、カスタマージャーニーは「その人が何を経験するか」を表すもの、と考えると分かりやすいでしょう。また、マーケティングファネルは、見込み客を段階ごとに把握するためのモデルで、顧客の体験や疑問を理解するためのカスタマージャーニーとは役割が異なります。

まずは、自社のどの顧客の視点で、どこからどこまでを見たいのかを思い浮かべてみてください。

BtoBとBtoCのカスタマージャーニーの違い

BtoCのカスタマージャーニーとは何が違うのか、気になる方も多いと思います。

企業の購買では、個人の買い物と比べて、組織としての条件を考える場面が多くなります。ただ、商材や企業によって進み方は異なりますし、BtoCでも家族で相談したり、時間をかけて検討したりすることはあります。ここで紹介するのは、BtoBで考えることが多い特徴で、すべての取引に当てはまるわけではない点は、ご了承ください。

購入を検討する人・決める人・使う人が分かれることがある

BtoBでは、情報を集めて検討する担当者、導入を決める上司や決裁者、実際にサービスを使う利用者が、それぞれ別の人であることがあります。必要に応じて、情報システム部門や購買部門が関わる場合もあるでしょう。

ここで挙げたのは役割の例です。会社によっては、担当者が検討から決裁、利用まで一人で兼ねることもあります。関係者の人数を多く見積もるのではなく、実際に誰が何を判断するのかを確かめることが大切です。

役割が違えば、確認したいことも変わります。例えば、担当者は今の業務に合うか、利用者は申請や承認を無理なく行えるか、決裁者は費用や導入負担に見合う効果を期待できるかを、確かめたいと考えるでしょう。

①関係者ごとの判断材料
表1 ワークフローサービスを検討する総務担当者のカスタマージャーニーマップの記入例

なお、ここでいう関係者は、顧客企業側の人です。売り手側のマーケティング部門や営業部門とは分けて考えておきましょう。

社内の合意や条件確認に時間がかかることがある

BtoBの購買では、予算の確保や契約条件の確認、導入時期の調整、関係者への説明などが必要になることがあります。そのぶん、検討を始めてから決まるまでに時間がかかる場合もあるでしょう。

一方で、金額が小さい、取引の頻度が高い、すでに取引がある、担当者に決裁の権限がある、といった場合は、短い期間で決まることもあります。BtoBなら必ず稟議を通す、何カ月もかかる、とは限りません。反対に、BtoCの購買がいつも衝動的で単純というわけでもありません。

実務では、時間がかかるかどうかよりも、「誰の、どんな確認が残っているのか」を調べておくと、必要な情報を用意しやすくなります。

情報収集と比較検討を行き来する場合がある

BtoBの検討は、情報収集から比較、決定へと一直線に進むとは限りません。比較の途中で新しい条件が出てきて情報収集に戻ったり、承認の途中で要件を確かめ直したりすることがあります。上司の指示で途中から検討に加わる人がいたり、いくつかの確認が並行して進んだりすることもあるでしょう。結果として、導入を見送る場合もあります。

マップでは段階を左から右へ並べますが、これは理解しやすくするための並べ方です。顧客が必ずその順番どおりに進むわけではない点も、考慮する必要があるでしょう。

ご自身の顧客の場合、誰がどんな判断に関わっているのか、一度書き出してみてください。

BtoBでカスタマージャーニーが必要とされる理由

関係者が多く、検討も行き来するとなると、顧客の動きをつかむのは難しいと感じるかもしれません。

だからこそ、顧客がどんな過程で検討し、判断しているのかを理解しておくことが大切です。カスタマージャーニーは、顧客の側ですでに起きているものです。マップは、それを書き出して見えるようにし、社内で共有したり施策を考えたりするための方法の一つといえます。すべての会社に欠かせないとまではいえませんが、次のような場面で役に立つでしょう。

顧客の検討状況に合った情報を届けるため

課題の原因を知りたいときと、候補を比べたいときとでは、顧客が必要とする情報は異なります。また、同じサービスでも、担当者は今の業務に合うか、決裁者は費用、利用者は運用の負担と、確かめたい内容が変わることもあります。

マップに顧客の疑問や必要な情報を書き出しておくと、担当者の疑問にばかり答えていないか、どの段階の情報が足りないかを確かめやすくなります。

マーケティング・営業・サポートの対応をつなぐため

顧客についての情報は、部門ごとに分かれて持っていることがあるものです。例えば、問い合わせ前の行動はマーケティング、比較や契約前に出る質問は営業、利用し始めてからの声はサポートが把握している、ということもあるでしょう。

マップを共通の材料にすると、それぞれの接点で得た知見をつなぎ、顧客の見方に部門間でずれがないかを確かめやすくなります。Nielsen Norman Groupも、マップを作る過程で会話が生まれ、チーム全体で認識をそろえられることを利点として挙げています。

マーケティングと営業を一人で兼務している場合でも、商談の記録やサポートへの問い合わせ内容などから、それぞれの場面の知見を取り込むことは可能です。

顧客がつまずく場面と改善すべき施策を見つけるため

情報を集めても比較の条件が分からない、社内で説明するための材料が足りない。顧客は、検討の途中でこうした場面でつまずくことがあります。

マップに顧客が何を判断できずにいるのかを書き出し、今ある記事や資料、営業の説明と照らし合わせてみると、どこに手を打てばよいかを考えやすくなります。Nielsen Norman Groupも、マップから体験を改善する機会を見つけることを、マップの構成要素の一つとしています。

ただし、マップを作っただけで施策の優先順位が決まったり、売上が伸びたりするわけではありません。見えてきた課題を、どう施策に変えていくかが大切です。記事づくりへの具体的な生かし方に関しては、後述します。

自社では、顧客についての情報がどの部門に分かれているのか、確かめてみてください。

BtoBカスタマージャーニーマップの具体例

作り方の前に、マップが実際にどのような形になるのかを知りたい方も多いと思います。

ここでは、マップに入れる基本項目と、記入例を紹介します。記入例は、この記事の最後まで同じものを使います。

マップに入れる基本項目

マップは、横軸に顧客が経験する段階、縦軸に段階ごとに書き出す項目を並べた表で作ると分かりやすいでしょう。

横軸の段階の名前や数に、決まりはありません。Nielsen Norman Groupも、段階は場面によって変わるとしています。

縦軸の項目として、本記事では次の5つを提案します。

  • 顧客の行動:その段階で顧客が実際にしていること
  • 疑問・期待・不安:顧客が知りたいこと、気にしていること
  • 顧客側の関係者:その段階で関わる人の役割
  • 接点:顧客が情報や人に触れる場面。売り手との接触に限らず、社内会議なども含む
  • 必要な情報・支援:顧客が次に進むために必要なもの

この組み合わせは、BtoBでは関係者が分かれやすいことを考えて、本記事で選んだものです。決まった標準の形式ではありませんので、目的に合わせて項目を足したり減らしたりしてください。

書き出した内容が、顧客から聞いた事実なのか、社内で考えた仮説なのかも分けておきましょう。欄を設けてもよいですし、表が見づらくなる場合は別のメモに残しておく方法もあります。

また、自社の担当者や実行日、確認する指標といった社内のToDoは、顧客の体験を書く欄とは分けて、施策管理の欄や別の表にまとめるとよいでしょう。顧客の体験と社内の作業が混ざると、顧客の視点が見えにくくなるためです。

マップは、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトで作ることが可能です。専用のツールを用意しなくても始められます。

法人向けサービスを検討する担当者の記入例

ここでは、ワークフローサービス(社内の申請や承認をオンラインで行うためのサービス)の導入を検討する、総務担当者を例にします。社内申請の手間を減らしたいと考えている担当者です。特定の企業の実例ではなく、説明のための仮の例です。

カスタマージャーニーマップのサンプル

このマップの目的は、導入前に顧客がどんな情報が足りずに困るのかを整理することです。そのため、範囲は課題に気づいてから、社内で合意して契約するまでとしています。利用開始後のつまずきを調べたい場合は、範囲を変えるか、別のマップを作るとよいでしょう。

表1 ワークフローサービスを検討する総務担当者のカスタマージャーニーマップの記入例

項目課題の認識解決策の情報収集候補の比較・検証社内合意・契約
担当者の行動申請遅延の原因を整理する運用改善とサービス導入を調べる候補の資料やデモで適合を確かめる上司・関連部署へ説明し条件を確認する
疑問・不安何が手間の原因なのかシステムを入れる以外の方法はあるか既存の承認ルールに合うか費用と導入負担を説明できるか
関係者の例申請者・承認者同僚・上司利用部門・必要に応じIT担当決裁者・必要に応じ契約担当
接点の例社内ヒアリング検索・記事・知人からの情報サービスページ・資料・デモ商談・見積もり・社内会議
必要な情報・支援の例業務を整理するチェック項目改善方法ごとの違い機能・条件の比較、導入支援の内容総費用・導入計画・契約条件

※関係者は役割の例です。同じ人が複数の役割を兼ねることもあります。また、実際の検討では、必ずしも左から右へ順に進むとは限りません。

このマップでは、総務担当者のペルソナという一つの視点で整理しています。上司や利用者の考えまで同じ欄に書き込むと、誰の疑問なのかが分からなくなります。Nielsen Norman Groupも、顧客の体験を分かりやすく伝えるために、一つのマップでは一つの視点に絞ることを勧めています。ほかの関係者の考えを詳しく知りたい場合は、別のマップに分けるとよいでしょう。

また、実際の検討では、社内合意の段階で上司から新しい確認事項が出て、候補の比較に戻ることもあります。

②比較へ戻る例
検討中に新しい条件が分かり、比較へ戻ることもあります。説明用の仮例で、必ず通る経路や実際の頻度を示したものではありません。

表1を見ながら、自社の顧客ならどの欄に何が入るか、想像してみてください。

BtoBカスタマージャーニーマップの作り方

いざ自社のマップを作ろうとすると、どこから始めればよいか迷うところです。

ここでは、初めてマップを作る際の進め方を6つに分けて紹介します。手順や項目は、対象とする顧客や目的に合わせて調整してください。また、順番どおりに一度で終えるものではなく、調べて分かったことに応じて、前の手順に戻りながら進めていくものです。

1. 作る目的と対象範囲を決める

まず、何のためにマップを作るのかを決めます。「売上を伸ばすため」だけでは、何を書き出せばよいかが定まりません。「導入前の顧客が、どんな情報が足りずに困っているのかを明らかにしたい」のように、知りたい困りごとを一文にしておくとよいでしょう。

あわせて、対象範囲も決めておきます。

  • どのサービスを対象にするか
  • 新規の顧客か、既存の顧客か
  • 導入前を見るか、導入後を見るか
  • どこから始まり、どこで終わるか

表1の例では、目的は導入前の情報不足を整理すること、範囲は課題の認識から社内合意・契約まででした。最初から対象を広げすぎないほうが、書き出す内容がぼやけずに済みます。

この手順では、目的・対象・始まりと終わりの地点を、短いメモにまとめておきましょう。

2. ペルソナを作る

次に、マップの中心に置く人物像(ペルソナ)を作ります。顧客企業の業種や規模、業務の条件を見たうえで、中心となる担当者の役割、抱えている課題、サービスを選ぶときの判断基準を具体的にしていきます。

表1の例なら、「社内申請の遅れに困っている総務担当者で、既存の承認ルールに合うかと、費用や導入負担を上司に説明できるかを気にしている」といった形です。

あわせて、決裁者や実際の利用者など、検討や導入に関わる人もメモしておきます。同じ人が複数の役割を兼ねることもあるため、役割の数をそのまま人数として考えないようにしておきましょう。

最初は、手元の顧客情報をもとに、中心となるペルソナを一つ作れば十分です。関係者全員分のペルソナを作る必要はありません。また、年齢や趣味、家族構成など、購買や利用の理解に関わらない項目を、理由なく埋める必要もありません。

分からない点は仮のものとして書いておき、次の手順で確かめて見直します。すでにペルソナがある場合は、今回の目的に合っているかを確かめ、必要なところだけ見直せば構いません。

3. 顧客の声と行動の情報を集める

ペルソナやマップの中身を、顧客の実際の声と行動で確かめていきます。情報源としては、例えば次のようなものがあります。

  • 顧客へのインタビュー
  • 問い合わせや商談の記録
  • 営業やCS(カスタマーサクセス:顧客がサービスを活用できるよう支援する担当)の知見
  • 利用できる場合は、サイト上の行動データ

すべてをそろえないと始められない、というものではありません。

兼務で時間が限られている場合は、まず手元にある問い合わせや商談の記録、営業担当者の話から、仮のマップを作るとよいでしょう。そのうえで、根拠のない部分がどこかをはっきりさせておき、とくに大切な不明点を顧客の声で確かめていきます。大がかりな調査を待って手を止める必要はありませんが、社内の想像だけで完成させないことが大切です。

Nielsen Norman Groupも、既存の知識や仮説からマップを作り始めた場合は、その後のユーザー調査で仮説を確かめ、更新していくことを勧めています。(参照:How Practitioners Create Journey Maps: Typical Uses, Roles, and Methods|Nielsen Norman Group)

顧客に話を聞くときは、例えば次のような質問が役に立ちます。

  • 検討を始めたきっかけは何でしたか
  • どのような方法で調べましたか
  • 候補を比べるとき、どこを重視しましたか
  • 社内でどのような質問を受けましたか
  • 検討が止まったのは、どのような理由からでしたか

集めた情報を書き出すときは、次の点に気をつけておきましょう。

  • サイトのアクセスデータは行動の一部で、そこから気持ちや購入の理由までは決めつけない
  • 調査で確かめた事実と推測を分け、根拠の日付や確認先を残す
  • 一人の発言を、顧客全体の傾向と考えない
  • 受注に至らなかった顧客や、導入を見送った顧客の声も、可能であれば聞く
  • AIで作った仮説を、顧客調査の代わりにしない

また、聞き取った内容を社外に出す場合は、個人情報や顧客の機密に配慮が必要です。

情報が集まったら、必要に応じてペルソナや段階、対象範囲に戻って見直していきましょう。

4. 検討段階ごとに行動・疑問・接点を書き出す

集めた情報をもとに、段階ごとに表を埋めていきます。横軸の段階は、表1を参考にしながら、自社の顧客の実態に合わせて変えてください。例えば、すでに製品の知識がある顧客や、上司の指示で検討を始める顧客の場合は、検討の入口が変わることもあります。

書き出す順番は、顧客がしていること、そのときの疑問や不安、関わる人と接点、の順にすると進めやすくなります。

とくに見落としやすいのが、売り手の施策を顧客の行動として書いてしまうことです。例えば「資料をダウンロードさせる」は売り手の施策で、顧客の行動ではありません。顧客の行動としては、「候補の資料を取り寄せて、機能を確かめる」のように書きます。

分からないところは、不明、または仮説と書いておきましょう。理想の流れで空欄を埋めてしまうと、実際の顧客の姿から離れてしまいます。

5. 必要なコンテンツや対応策を考える

表を埋めたら、顧客の疑問ごとに、どんな情報や支援が必要かを考えます。対応の方法は、記事だけではありません。資料、営業の説明、デモ、導入支援など、BtoBではさまざまな手段があります。

表1の例では、次のように考えることが可能です。

  • 「既存の承認ルールに合うか」という疑問には、条件の説明やデモで確かめられるようにする
  • 「費用と導入負担を説明できるか」という疑問には、費用や導入計画が分かる情報を用意する

すべての課題を、新しい記事で解決しようとする必要はありません。オウンドメディアの記事への生かし方に関しては、後述します。

6. 関係部門と確かめ、実行する施策を決める

最後に、マップを営業や導入支援の担当者に見てもらい、実際の顧客とずれていないかを聞きます。ここでいう関係部門は自社側の部門で、顧客側の関係者とは別です。マーケティングの担当者だけで作ると、商談の場や導入後の顧客の様子が抜け落ちることもあるため、ほかの部門の目で確かめておくことが大切です。Nielsen Norman Groupも、マップづくりは多くの場合、複数の職種が協力して進めるものだとしています。

そのうえで、実行する施策と担当者、確認する日、確かめたい顧客の反応を決めます。

マップの空欄をすべて埋め終わるまで、施策に取りかかれないということはありません。とくに大切な不明点は、先に確かめておくとよいでしょう。

最初から完璧なマップを目指さず、手元の情報で作れるところから始めていただけたらと思います。

BtoBカスタマージャーニーマップをオウンドメディアのコンテンツ作りに活用する方法

マップはできたけれど、記事の企画や改善にどうつなげればよいのか分からない、という方もいると思います。

ここからは、表1と同じ例を使い、ワークフローサービスを提供する企業が、顧客である総務担当者に向けて記事を作る場面で、記事のテーマ、既存記事の見直し、記事の内容と次の導線まで、具体的に考えていきます。なお、以下で挙げる検索語は説明のための候補で、検索数や順位を調べたものではありません。

顧客の疑問から記事テーマとキーワードを考える

まず、マップの「疑問・不安」の欄を、顧客が知りたいこととして言い換えます。自社が売りたい機能から記事のテーマを決めるのではなく、顧客の疑問を出発点にすることが大切です。

表1の例では、次のように考えることが可能です。

  • 「何が手間の原因なのか」→テーマ:申請業務の見直し方→検索語の候補:「申請業務 効率化」など
  • 「既存の承認ルールに合うか」→テーマ:ワークフローの選び方・比較時の確認点→検索語の候補:「ワークフロー 選び方」など

候補を絞るときは、顧客が実際に使っている言葉、実際の検索結果と検索意図、利用できる検索データを確かめておきましょう。マップの一マスから機械的に一記事を作る、という決まりにする必要はありません。

また、記事は検索から読まれるものだけではありません。営業担当者が商談のあとに顧客へ共有する記事や、顧客が社内で説明するときに使う情報もあります。SEO記事は認知の段階のためのもの、と決めずに、比較や判断に役立つ記事も考えておくとよいでしょう。

既存記事を照らし合わせ、不足する内容を見つける

次に、マップの疑問や必要な情報に、既存記事のURLと該当する箇所を対応させていきます。記事の本数だけでなく、次の点も確認しておきましょう。

  • 疑問への答えが、実際に記事に書かれているか
  • 条件や情報が古くなっていないか
  • ほかの記事と内容が重複していないか

例えば、「ワークフローの選び方」という既存記事があるとします。読み返してみると、機能や料金の比べ方は書かれているものの、既存の承認ルールに対応できるかを確かめる観点が抜けていた、としましょう。この場合、「既存の承認ルールに合うか」という疑問に答える判断材料が不足している、と考えられます。なお、これも説明のための仮の例です。

不足が見つかったら、既存記事への追記で足りるのか、検索意図が違うので新しい記事が必要なのか、サービスページや資料で説明したほうがよいのかを考えます。必ずしも新しい記事を作る必要はありません。

改善したい記事が複数あるときは、顧客の困りごとの大きさ、相談や検討への関わり、かかる工数などを見たうえで選ぶとよいでしょう。リライトする記事の優先順位の決め方も参考にしてください。

検討状況に合わせて記事の内容と次の導線を考える

記事の内容を考えるときは、その記事を読む人が何を知りたいのか、次に何を確かめたいのかから、説明の順番や具体例、比較の項目、注意点を決めていきます。「比較段階の記事」のように段階の名前だけで、読む人全員をひとくくりにしないことが大切です。

表1の例で考えてみると、次のようになります。

  • 申請業務の改善方法を知りたい人向けの記事:業務の見直し方と選択肢を示し、詳しい選び方の記事へつなぐ
  • 候補を比べている人向けの記事:承認ルールへの対応や運用の負担などの確認点を示し、必要に応じてサービスの仕様や導入支援の情報、デモの案内へつなぐ
  • 社内で説明する材料を探している人向けの記事:費用や導入計画を確かめられる情報へつなぐ

先ほどの「ワークフローの選び方」記事であれば、例えば「申請金額や所属部署によって承認者が変わる場合、必要な承認経路を設定できるか」という確認項目を追記します。自社で使っている承認の流れを整理し、候補サービスの仕様やデモで確かめる、という手順を示すとよいでしょう。ただ、個別の承認ルールに対応できるかは、一般的な選び方の記事だけでは答えきれないこともあります。記事では確認する点を示し、詳しい条件は仕様を確かめられるページやデモの案内につなぐ、といった形が考えられます。記事で示すことと、次に確かめる情報や窓口は、分けて考えておきましょう。

次の導線は、すべての記事から問い合わせへ直接つなぐ必要はありません。関連記事、サービスページ、資料、問い合わせなどの中から、読者が次に必要とするものを選びます。一つの記事が複数の検討状況や関係者の役に立つこともあるため、導線の順番も一つに決めなくて構いません。また、記事を読んだことだけで、その人の検討段階や決裁権、購入の意向までは判断できない点は、ご了承ください。

問い合わせの完了を成果(CV)とする場合、サービスページへの移動はその手前の行動です。両者は分けて確認しておきましょう。導線を置けば、問い合わせや受注が増える、というものではありません。

③顧客の疑問から記事改善への流れ
顧客の疑問から、記事テーマと既存記事の改善内容を考える例。検索語は説明用の候補で、検索数や順位を調べたものではありません。

公開したあとは、記事の閲覧やリンクのクリックといった数値に加えて、営業担当者や顧客から寄せられる質問もあわせて確かめていきます。情報が見つけてもらえているか、疑問の解消や社内での説明に使われているかを見て、新しい情報が得られたら、記事とマップの仮説を見直していきましょう。ただ、数値の変化だけで施策の効果を決めつけないことも大切です。見直す頻度も、一律に決める必要はありません。確認する指標の選び方は、オウンドメディアのKPI設定方法で解説しています。

まずは、マップの疑問を一つ選び、既存記事に答えが書かれているかを確かめてみてください。

まとめ|BtoBのカスタマージャーニーを顧客理解と施策に生かそう

BtoBのカスタマージャーニーでは、担当者だけでなく、決裁者や利用者など複数の関係者と、それぞれの判断材料を見ながら、顧客の視点で検討の過程をつかむことが大切です。マップは、その過程を書き出し、必要な情報や対応を考えるための方法の一つです。

まずは対象を一つ選び、表1の仮の例を自社の情報に置き換えて、初版のマップを作ってみてください。そのうえで、足りない情報や対応を一つ決めます。

例えば、既存の「ワークフローの選び方」記事に承認ルールの確認点があるかを調べ、不足していれば追記し、仕様を確かめられるページへの案内を整える。公開したあとは、顧客や営業担当者から同じ質問が残っていないかを確かめる、といった進め方です。

最初から完璧な図を作る必要はありません。顧客の声で確かめながら、少しずつ施策に生かしていただけたらと思います。

参考資料・出典

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この記事を書いた人

企業のオウンドメディアで、企画・構成・執筆・編集から、SEO改善、アクセス分析まで担当しています。HR・キャリア・介護領域を中心に、外部ライターの進行・品質管理にも携わっています。

「編集実務室」では、日々の運用で試したことや考えたことをもとに、記事制作、SEO・AI検索への対応、生成AIの活用について発信しています。ひとりでメディアを運営する方にも役立つよう、実務で使える考え方や進め方をまとめています。

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